++ 死刑判決 和歌山毒物カレー事件 除外された証拠に真実が隠されていないのか−−++


2013.3.10 2009.4.22初版

死刑判決 和歌山毒物カレー事件

除外された証拠にこそ、真実が隠されている

このような最高裁の論理がまかり通り、そしてこのような判例が残されたら、
あとは「なんでもあり」となる危惧が、現実のものとなってしまう。
怖ろしいことだ。
このようなゴマカシの論理でゴリ押ししようとも、被告人が犯人であることにはならない

結語を否定形にして論理の正当性を印象づけようとする手口は警察・検察・裁判所の常套手段である。
が、このような重大事件でそれを使ってはいけない。
あくまでも確かな証拠に基づく認定をしなければならない。

最高裁は判決の中でこう述べている。
「動機が解明されていないことは、被告が犯人であるとの認定を左右するものではない」
裁判の現場で、このような詭弁を弄するような「言葉遊び」で取り繕ってはイケナイ。
批判に耐えうる確かな科学的合理性に基づいた物的証拠と、ブレない証言で裏打ちされなけなればならない。
被疑事実を検察に立証させることが、裁判の鉄則だ。
が、それができていない。

これができなければ、無罪である。
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中日新聞2009年4月22日
・・・ 膨大な証拠を偏りなく厳選できるのか。除外された証拠に真実が隠されていないのか ・・・

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毒カレー事件死刑判決
裁判員 裁けるのか
迅速審理証拠厳選偏り不安


  4人が亡くなった和歌山市の毒物カレー事件の上告審判決で、最高裁は、状況証拠の積み重ねで林真須美被告(47)に死刑を宣告した一、二審の判断を支持した。動機の解明がなされないまま示された最終判断は、スタートまで1カ月を切った裁判員制度に多くの課題を投げかけている。(東京社会部・加藤文)

 ▼誰がヒ素を
 カレー鍋にヒ素を混入させたのは誰か。争点はここに尽きた。
 林被告は捜査段階から一貫して否認し調書は一通も作成されなかった。
一審和歌山地裁の初公判で「私は全く関係していません」と全面否認した後は黙秘を貫き、二審では一転して被告人質問に応じ無罪を主張した。
 しかし、最高裁判決は、状況証拠の積み重ねにより「被告が犯人であることは、疑いのない程度に証明されている」と判断した。
 カレー鍋に混入されたヒ素と被告宅で見つかったヒ素を同一とする鑑定結果。被告の頭髪からも高濃度のヒ素が検出され、付着状況から亜ヒ酸などを取り扱っていたと推認できること。夏祭り当日、カレーの鍋に亜ヒ酸をひそかに混入する機会があったのは被告だけだったことー。
 最高裁は、こうした検察側の重層的な立証を追認。林被告の犯行と結論付けた。

 ▼動機は何か
 事件当日、周辺住民から冷たい仕打ちを受けたためヒ素を混入したとする「激高説」を主張した検察に対し、一審判決は「動機は解明できない」と指摘、二審判決は「直接的な動機は不明」と述べ、いずれも検察側主張を認めていない。
 上告審で、弁護側は「地域住民に対して無差別殺人を行う動機は全くない」と主張したが、最高裁はこの日の判決で「動機が解明されていないことは、被告が犯人であるとの認定を左右するものではない」と述べ、動機を解明することにこだわる必要はないという姿勢をにじませた。
 「精密司法」と呼ばれる日本の刑事裁判では、検察の起訴した内容だけではなく動機や背景も掘り下げて詳細に認定してきた。
 しかし、五月二十一日から市民が参加する裁判員制度が始まる。これまで以上に審理の迅速化が求められるため、動機や背景の解明は、さらに難しくなる可能性がある。

 ▼反証削減も
 裁判で検察側が提出した証拠は、約千七百件。
約三年七カ月に及んだ一審の開廷数は九十五回。
二審も結審まで十二回を要した。
 裁判員裁判は集中審理が原則となり、通常三−五日で審理が終わるとされる。審理期間が一カ月を超すのは極めて例外的になる。しかしカレー事件のように被害者が多く、動機も不可解な否認事件の場合、審理にどれだけ時間がかかるか予想はつかない。一方、長期化を避けようと公判前整理手続きで証拠を厳選し、審理を急げば、弁護側が十分に反証できなくなるとの指摘もある。
 「検察側には十分に立証させても、弁護側は反証する機会を削られ、変遷した目撃証言が証拠採用されなくなる。偏った証拠で裁判員が結論を出す可能性がある」。林被告の上告審弁護団長の安田好弘弁護士はそう危惧する。
 被害者や関係者の数が多い重大事件で膨大な証拠を偏りなく厳選できるのか。除外された証拠に真実が隠されていないのか ‐ ‐。
 毒物カレー事件の裁判は、裁判員制度が抱える問題を浮かび上がらせている。

認定事実要旨
○毒物カレー事件
  1998年7月25日、夏祭りのカレー鍋の中にヒ素を混入。カレーを食べた住民4人を殺害し、63人を急性ヒ素中毒にさせた
          (殺人・殺人夫遂罪)
○ヒ素入りくず湯事件
  死亡保険金などの取得目的で97年2月、夫にヒ素を混入したくず湯を食べさせた
            (殺人未遂罪)
○ヒ素入り牛井事件
  死亡保険金などの取得目的で97年9月、知人男性にヒ素入り牛井を食べさせ入院給付金をだまし取った
         (殺人未遂・詐欺罪)
○ヒ素入りうどん事件
  死亡保険金などの取得目的で98年3月、知人男性にヒ素入りうどんを食べさせた
             (殺人夫遂罪)
○保険金詐欺の3事件
  夫と共謀し93−97年、被告のやけどや夫の骨折の原因、障害の程度を偽り、高度障害保険金など総額約1億6000万円を詐取した
          (詐欺罪)
[写真]
現場検証を前に報道陣に公開された夏祭り会場の再現現場=1998年11月7日、和歌山市園部で
     主文

本件上告を棄却する。

      理由
弁護人安田好弘ほかの上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論にかんがみ記録を精査しても,本件につき,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。すなわち,原判決の是認する第1審判示第1の殺人,殺人未遂の事実は,自治会の夏祭りに際して,参加者に提供されるカレーの入った鍋に猛毒の亜砒酸を大量に混入し,同カレーを食した住民ら67名を急性砒素中毒にり患させ,うち4名を殺害したが,その余の63名については死亡させるに至らなかったという事案(以下「カレー毒物混入事件」という。)であるところ,被告人がその犯人であることは,
@上記カレーに混入されたものと組成上の特徴を同じくする亜砒酸が,被告人の自宅等から発見されていること,
A被告人の頭髪からも高濃度の砒素が検出されており,その付着状況から被告人が亜砒酸等を取り扱っていたと推認できること,
B上記夏祭り当日,被告人のみが上記カレーの入った鍋に亜砒酸をひそかに混入する機会を有しており,その際,被告人が調理済みのカレーの入った鍋のふたを開けるなどの不審な挙動をしていたことも目撃されていること
などを総合することによって,合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されていると認められる(なお,カレー毒物混入事件の犯行動機が解明されていないことは,被告人が同事件の犯人であるとの認定を左右するものではない。)。
また,その余の事実についても,被告人の犯行(一部は夫Aとの共謀による犯行)と認めた第1審判決を是認した原判決は,正当として是認することができる。
本件は,上記カレー毒物混入事件のほか,いわゆる保険金詐欺に係る殺人未遂及び詐欺から成る事案であるところ,取り分け,食物に毒物を混入して無差別の大量殺傷を敢行したカレー毒物混入事件の罪質は極めて悪く,態様の卑劣さ,残忍さも論を待たない。
殺害された被害者は,上記夏祭りを主催した自治会の会長(当時64歳の男性)及び副会長(当時53歳の男性)と,女子高校生(当時16歳)及び小学生の男児(当時10歳)であるが,いずれも何ら落ち度がないのに,楽しいはずの夏祭りの最中,突如として前途を断たれたものであって,その無念さは察するに余りある。
遺族らの処罰感情が極めて厳しいのは当然のことである。
また,最悪の事態は免れたものの,生死の境をさまよった重症者も多数に及び,その中には長期間後遺症に苦しんでいる者も存するのであって,その結果は誠に重大であるところ,同事件が,地域社会はもとより,社会一般に与えた衝撃も甚大であるといわなければならない。
そして,被告人は,カレー毒物混入事件に先立ち,長年にわたり保険金詐欺に係る殺人未遂等の各犯行にも及んでいたのであって,その犯罪性向は根深いものと断ぜざるを得ない。
しかるに,被告人は,詐欺事件の一部を認めるものの,カレー毒物混入事件を含むその余の大半の事件については関与を全面的に否認して反省の態度を全く示しておらず,カレー毒物混入事件の遺族や被害者らに対して,慰謝の措置を一切講じていない。
以上のような犯情等に照らせば,被告人の刑事責任は極めて重大であるというほかはないから,カレー毒物混入事件における殺意が未必的なものにとどまること,前科がないことなど,被告人のために酌むべき事情を最大限考慮しても,原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,当裁判所もこれを是認せざるを得ない。
よって,刑訴法414条,396条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
検察官大島忠郁
公判出席
(裁判長裁判官那須弘平 裁判官藤田宙靖 裁判官堀籠幸男 裁判官田原睦夫 裁判官近藤崇晴)
和歌山カレー事件最高裁判決20090422180047.txt
和歌山カレー事件最高裁判決20090422180047.pdf

和歌山カレー事件の鑑定ミスはなぜ起きたか
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ニュース・コメンタリー (2013年08月31日)
和歌山カレー事件の鑑定ミスはなぜ起きたか
報告:神保哲生
  事件に使われたヒ素の再鑑定によって、既に死刑が確定している和歌山カレー事件に冤罪の疑いが出てきていることは、4月にこの番組で報道した(マル激トーク・オン・ディマンド 第628回・2013年04月27日「やはり和歌山カレー事件は冤罪だったのか」)ところだが、このほどなぜそのような問題が起きてしまったのかがより鮮明になってきたので、改めて報告したい。
  夏祭りの炊き出しで出されたカレーに猛毒のヒ素が混入し、4人の死者と63人の負傷者を出した「和歌山カレー事件」は、林眞須美被告が否認・黙秘を続ける中、2009年4月に最高裁で死刑が確定している。4月の番組では、その裁判で林氏の犯行と断定される上での決定的な証拠となっていた「亜ヒ酸の鑑定」において、新たな事実が明らかになったことを、林氏の弁護人である安田好弘弁護士をスタジオに招いて、お伝えした。
  その内容はこんなものだった。この事件では犯行に使われたとみられる現場付近で見つかった紙コップに付着していたヒ素(亜ヒ酸)と、林氏宅の台所のプラスチック容器についていたヒ素、そしてカレーに混入されたヒ素を鑑定にかけた結果、その組成が同じものだったことがわかり、それが林氏の犯行と断定する上での決定的な、そして唯一の物証となっていた。判決でもこの「組成が同じものだった」とされていたが、京都大学の河合潤教授が、鑑定のデータを再評価するために不純物をより詳細に調べた結果、実際はこの3つの資料の間には重大な差違があることがわかった。
  犯行が林氏によるものとした最高裁の判断は、林氏以外にヒ素を入れられる者がいなかった、氏が鍋の中を覗くなど怪しい動きをしていたといった、状況証拠やあやふやな証言に基づくものが多く、3つのヒ素が一致したとする鑑定結果は林氏の犯行と断定する上で決定的な意味を持っていた。
  今回の取材で明らかになった問題は、東京理科大学の中井泉教授による当初の鑑定が間違っていたのではなく、そもそも検察が依頼した鑑定の依頼内容とその依頼に対する中井教授の理解、そしてそれが報道や裁判で誤った形で一人歩きしていってしまったということだった。中井氏は、依頼された鑑定の内容は、林氏自宅のヒ素と紙コップのヒ素とカレーのヒ素の3つにどれだけの差違があるかを証明することではなかったと、雑誌「現代化学」の中で述べている。中井氏は検察から依頼された鑑定の内容を、3つの資料の差違を見つけることではなく、3つの資料を含む林氏の周辺にあったヒ素のすべてが同じ輸入業者の手を経て入ってきたものだったかどうかを調べることだと理解し、それを鑑定で確認したに過ぎなかったという。
  目的をそのように解釈した中井教授は、有罪の決め手となった3つの資料の差違を詳細に分析はせず、3つの資料を含む10の資料のヒ素がすべて同じ起源を持つものであったことを確認するための鑑定しか行っていなかった。しかし、実際に林氏が自宅にあったヒ素を紙コップでカレーに入れたことを裏付けようというのであれば、その3つのヒ素の起源が同じであることを証明しただけでは明らかに不十分である。その3つがまったく同じものでなければならない。
  弁護団から鑑定結果の再評価を依頼された河合教授がその点を疑問に思い、3つの資料について不純物を含めてより詳細にデータを再評価したところ、そこには大きな差違があることがわかったのだという。 ...
  和歌山カレー事件で死刑判決の決め手となった鑑定結果をめぐり見えてきた日本の刑事司法の根本的な問題点と、今回の問題の中に、遠隔操作ウィルス事件とも共通した「司法と高度技術」の問題が見て取れる点などについて、ジャーナリストの神保哲生の報告を受けて、神保と社会学者の宮台真司が議論した。
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■ モリブデンや鉄の分量が違う、まったくの「別物」 〜和歌山毒物カレー事件 --> こちら (ブログ2013.5.21)ご本が出版されました
■ 毒カレー事件:自宅と現場ヒ素別物 「成分に差」と弁護団主張 --> こちら
■ 和歌山県警科捜研・鑑定デッチ上げ 〜和歌山毒物カレー事件への関与はいかに --> こちら
■ じつに妙な事件である 〜警察、検察も力不足だった、最高裁のコメントもオカシイ〜  --> こちら(ブログ2009.4.23)
■ 死刑判決 和歌山毒物カレー事件 --> こちら
■ 毒物カレー事件:林真須美被告が心境 来る4月21日最高裁判決 --> こちら
■ 倒錯した論理、詭弁を弄する裁判官  国民が不幸になるだけ --> こちら (ブログ2009.1.16)
■ 最高裁 科学的合理性にきちんと立ち向かえるか --> こちら (ブログ2008.7.26)
■ 和歌山毒物カレー事件 あれから10年 --> こちら
■ 人を助けもするが、凶器にもなる テレビなどマスコミ -->  こちら (ブログ2008.2.27)


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このページとは関係がなく恐縮ですが・・・
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内容紹介
◎ジャーナリスト 大谷昭宏氏推薦

白バイは“黒バイ”か
地方局記者が執念で迫る

「これです」
被告の支援者が数枚の写真を取り出した。
路面には黒々とした二本の筋。
裁判で有罪の決め手となった、スクールバスの「ブレーキ痕」だ。

「このブレーキ痕は、警察が捏造した疑いがあります。これは冤罪ではありません。警察組織の犯罪です」

――二〇〇六年三月三日午後二時半頃、高知県旧春野町(現高知市)の国道五六号で、高知県警の白バイと遠足中のスクールバスが衝突し、白バイ隊員(二十六)が死亡。
バスの運転手、片岡晴彦さん(五十二)は現行犯逮捕された。
同年十二月には業務上過失致死罪で起訴され、翌二〇〇七年六月には禁固一年四カ月の実刑判決が高知地裁で下された。
その後、高松高裁、最高裁と判決は覆らず、二〇〇八年十月、片岡さんは獄中の人となった。

香川県と岡山県を放送エリアとする地方テレビ局「KSB瀬戸内海放送」。
同局の報道記者である著者のもとに突然、見知らぬ男性から電話が掛かってきた。
男性は、「この裁判は作られたものだ」と訴えた。
事件が発生した高知県のマスコミは、どこも耳を貸してくれない。
藁をもすがる思いで、かすかなつてを頼って県外の地方局の記者に連絡してきたのだ。

この一本の電話をきっかけに片道三時間半、著者の高知通いの日々が始まった。
法廷の場で結審されたとはいえ、不可解な点が多々ある高知「白バイ衝突死」事故。
本事件の闇を徹底的に追った渾身のルポルタージュ!

◎テレビ朝日『報道発 ドキュメンタリ宣言』の放送で大反響!
  
    ■ 耐震偽造で新たな展開になっています ご興味があればごらんください --> まとめページをアップ   2006.10.20
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