毒物カレー事件:林真須美被告が心境 来る4月21日最高裁判決<-- 前のページ98年7月に和歌山市で起きた毒物カレー事件で殺人罪などに問われた林真須美被告(47)に対する上告審判決が21日、最高裁第3小法廷(那須弘 平裁判長)で言い渡される。林被告は1、2審で死刑判決を受けたが、一貫して無罪を主張。事件から10年9カ月を経て、司法の最終判断が下される。この判 決を前に、林被告は毎日新聞の記者と接見し「無罪に決まっているやん」「長かった……」「子供たちがいなかったらとっくに死んでる」などと心境を語った。 【銭場裕司】
林被告は今月3日、大阪拘置所(大阪市)で記者と接見した。ピンクのジャージー姿で現れた林被告は「来てくれてありがとう」とアクリル板越しに笑みを浮かべ、逮捕時よりも少しやせた様子。体調を尋ねると、「いいわけないやん。死刑なんよ」と話した。
判決への思いを聞こうとすると、質問を遮って「無罪に決まっているやん。そんなん私やってないから」と強い口調で訴えた。「長かった……。最高裁 は甘くないと言われるけど、私がやった直接証拠があるの? 自白もないでしょ。やってたらやったってとっくに言うてるよ」と早口でまくし立て、「私は人殺 しなんて嫌いやの。何とかしてよ」と繰り返した。
1審で黙秘を貫いた心境を尋ねた。少し考えて「今になって1審が大事だったってことは分かる。だって、死刑になるなんて思わないじゃない」とみけ んにしわを寄せた。「誰でも現場を見れば分かる。刑事裁判は犯罪の証明があって罰せられるんでしょ」と司法への不信感をにじませながら、一方で、無罪判 決・釈放に向け準備をしているとも話した。
話題が4人の子供に向かうと、表情ががらりと変わった。「子供がいないと駄目なの。子供たちがいなかったらとっくに死んでる」と涙ぐんだ。接見時 間が残り少なくなると「死刑ってそれなりに証拠がある人がなるんじゃないの。お願いやから分かってね」と改めて懇願し、手を振りながら扉の向こうに去って いった。
◇被害者の会会長「真実は変わらぬ」
事件が死亡した4人の遺族や被害者に残した傷は今なお深い。
長女幸さん(当時16歳)を失った鳥居芳文さん(63)は、判決を前に「どんな判決であれ受け入れる以外にない。何も変わらない」と語った。この 10年余、生活を維持するため必死だったという。妻百合江さん(58)は「事件当日を正確に、今日のことのように鮮明に思い出す」と話し「もし、1、2審 を覆すような判決だったら」と不安も漏らした。
谷中千鶴子さん(72)は夫孝寿さん(当時64歳)を亡くした。悲しみが癒えることはなく「今は静かに待ちたい」と声を振り絞った。事件後に知り合い、支え合ってきた百合江さんと一緒に判決を傍聴するつもりだ。
「カレー事件被害者の会」会長、浜井満夫さん(58)は「真実が変わることはない。自分の中で区切りをつけたい」と語った。
◇目撃証言など信用性が争点
裁判では現場での目撃証言などが争点となった。林被告がカレー鍋に毒物の亜ヒ酸を混入したことを示す直接的な証拠はなく、検察側は「鍋のそばに1 人でいた林被告が、のぞき込んで湯気をかぶった」との目撃証言や、関係先にあった亜ヒ酸の鑑定など状況証拠を積み重ねて立証を目指した。弁護側はいずれも 信用性を争った。1、2審は検察側主張を採用して「亜ヒ酸を混入する機会があったのは林被告しかいない」と結論付ける一方、動機は不明とした。
上告審で弁護側は改めて「目撃されたのは林被告ではなく第三者の可能性がある」と主張。「被告には動機が全くなく、有罪の根拠とされた証拠は信用 できない」と訴えた。これに対し検察側は「犯人は別にいるとの弁護側主張は根拠のない憶測に過ぎない」と上告棄却を求めている。
◇ことば 和歌山毒物カレー事件
98年7月25日、和歌山市の園部第14自治会の夏祭りで、主婦らが作ったカレーを食べた67人が急性ヒ素中毒を発症し、うち4人が死亡した。県 警は同10月、知人男性に対する殺人未遂容疑などで林真須美被告を逮捕。同12月にカレー事件の殺人・殺人未遂容疑で再逮捕した。
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