++ アフガン戦争6年 「外国人が国を荒らした」殺しながら援助はできない ++


2008.8.28 2007.9.10初版

アフガン戦争6年  「外国人が国を荒らした」

   殺しながら援助はできない   殺しながら助けるなんて、そんな援助があるのか


   このページのもくじ:
     1.米軍への怒り
     2.一番は干ばつ対策  戦争どころじゃない
     3.軍事協力の中止にこそ積極的な意味がある

しんぶん赤旗(2007年9月9日)より抜粋

「ペシャワール会」現地代表 中村哲さん
中村哲意志  なかむら・てつ

  一九四六年生まれ。
八四年以来、パキスタンのペシャワールに赴任し、難民医療に携わる。
九一年からアフガニスタン東部山岳地帯に三カ所の診療所を作り、治療を行う。
二〇〇三年にアジアのノーベル賞とされるマグサイサイ賞受賞。
『ペシャワールにて』、『アフガニスタンで考える―国際貢献と憲法九条』など著書多数。


   ■ アフガンで活動18年、中村医師が語るタリバンの真実 --> こちら(必見)


  十日から始まる臨時国会では、米軍主導のアフガニスタン戦争を支援するためのテロ特措法の延長が大きな焦点となっています。二〇〇一年秋以降の六年間の戦争で、現地アフガニスタンでは何が起こっているのか。同国で医療や水源確保などの支援を続けてきた「ペシャワール会」現地代表の中村哲さん(医師)に聞きました。
(聞き手・藤原直)
アフガン地図

  現場はひどいものです。よく日本で「国際社会」(の要請)と言われるが、違和感を覚えるのは、アフガンの人々の現実を置き去りにして、国際社会がどうこうと言っていることです。

  アフガン戦争が何をもたらしたか。現地から見ると、破壊以外のものは少なかった。アフガンの最大の問題は、人々が生活できない状態になっているということです。戦争どころじゃない、外国人は出て行ってほしい、というのが、ほとんどの人の気持ちです。米軍に推されてできたカルザイ政権自身が、とにかく外国人が来て国を荒らしたと堂々と述べています。


1. 米軍への怒り

  今回、七月末に帰国するまでいたのは、アフガン東部のナンガルハル州の州都ジャララバードからクナール州に近い所です。米軍の活動が盛んな場所で、同州には診療所が二つありましたが、戦場になったので三年前に放棄しました。

  パキスタンとの国境地帯で、特攻兵というか、米軍の車両に突っ込んでいく人がいました。もっている爆弾は殺傷力が小さいものでした。ところが仰天 した米兵が突然群衆に向かって撃ち出し、十七人が即死しました。それに対してみんなが怒り、外国人は出て行けと言って、悪循環です。米軍は、「イスラム過激派のテロで十八人死亡」と発表しました。

  米軍の過剰反応で犠牲者を出すことは日常茶飯事です。最近は、米軍もNATO(北大西洋条約機構)軍も、自国の兵隊が死ぬと反戦運動が起きるから、地上軍を出す回数を減らし、ほぼ空爆に頼っています。空からの攻撃では、民間人との区別がつきません。米軍の誤爆で死ぬのは民衆です。

  だから治安は悪くなる一方です。たしかアフガン復興が始まったころは、米軍は一万二千人。アフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)は人を守るだけで、四千人でした。今は合計五万人いる。火事を消すのにガソリンをかけているようなものです。みんな(軍隊が)早く撤退してくれるのを望んでいます。


2. 一番は干ばつ対策  戦争どころじゃない

難民キャンプの子供達パキスタン・アフガニスタン国境地帯のチャマン近郊の難民キャンプで暮らすアフガン難民の子ども=6月12日(ロイター)


私たちは今、ジャララバード近くで、川からの用水路を掘っています。一番の難関の第一期工事の十三キロは今年四月に完成しました。総工費九億円、 のべ三十八万人の雇用が発生しています。残りの七キロが完成すると、五千町歩(約五千f)以上を潤せると思います。その工事で現場に張り付けになって、もう四年になります。この四年間は、重機は運転しても、ほとんど白衣を着たことはありません。

  農村にいけば、砂漠化がどんどん進んでいます。アフガンの二千万人の農民は、ヒンズークシ山脈の雪解け水で潤されるインダス川の支流の川に頼って 農業をしていました。ところが最近は、温暖化で洪水は増えるけれども、雪解け後は枯れ川になってしまうケースが広がっています。

  これは恐るべきことで、何十年も待たずに、いままで相当な農業生産を誇っていた国で、国民の生存する空間が消滅する可能性すらある。そのことが一番恐怖であり、戦争どころではないというのが実態です。パキスタンにいるアフガン難民は、今は三百万人に増えています。

  だから私たちが今、一番力を入れているのは、干ばつ対策です。医療も教育も大事だが、それ以前に生きなければならない。もともと、八割以上が農民で、自給自足の国でした。

  みんなの最低限の願いは、ご飯が三度三度食べられて、家族仲良くできればいいということです。国民の半分が飢えている状態で軍事活動は無意味だというようなことを最近、カルザイ大統領も述べています。

  私たちは田舎で長年活動し、何をしてきたか知られているので、私たちを攻撃する人は、まずいません。ガードも何もついていません。何かあれば地元の人が守ってくれます。地元の人にとっても水は死活問題だからです。

  でも米軍の肝いりでやっている道路工事会社は、しょっちゅう攻撃されている。僕が覚えているだけで六回誘拐事件があり、ぜんぶ死体になって出てきた。"殺しながら助ける"なんて許されないということです。

  「外国人」だといえぱ、軍隊だけでなく、国連とかNGO(非政府組織)も、信用がない。NGOというと、「よそからきて自分たちを食い物にする人たち」というイメージでしょうか。信じられないでしょうが、私たちは「おたくはNGOじゃないからいいんだ」と言われるほどです。


3. 軍事協力の中止にこそ積極的な意味がある

完成した井戸に水を飲みに来た子どもたち(ペシャワール会提供) 完成した井戸に水を飲みに来た子どもたち(ペシャワール会提供)


自衛隊の活動について、アフガン人の感情は屈折しています。かつては一種の親日感情が一般的でした。ところが近ごろはどうも、自分たちの考えていた日本とは違うようだという空気が根を下ろしつつあります。

  アフガンでは毎日、(米軍などによる)空爆だけで、何十人、何百人が命を落としています。現地からみれば、その空爆を助けているのが日本による給油なら、(空爆と)同罪です。

  東京の復興会議で決められた復興資金が四十五億ドル。米国が今までアフガンの「テロ掃討作戦」に使ったお金が三百億ドル。それだけのお金があったら、もうちょっとアフガンはましな国になったのではないかと。それが、日本の支援しているアフガン攻撃の実態です。

  テロ特措法が延長になると、今まで自衛隊の活動を知らなかった人も、知ることになるでしょう。さらに自衛隊がアフガンに現れたりしたら、私さえ攻撃されるでしょう。それくらい、みんなの生活が追い詰められている。

  この事態を解決するには、国民が安心して食べていけるようにすることが先です。まず干ばつ対策です。日本も温暖化を促した一員として、それぐらいの償いはすべきじゃないでしょうか。

  しかし、今できることといえば、何をするかより、何をしないかということです。日本に帰ってきて、びっくりしたのは、「テロ特措法をやめるなら、 ほかに何をするんだ」という議論が普通になっていることです。軍事協力しないことが、非常に積極的なインパクトがあると誰も言わない。

  アフガン人はみんな「殺しながら助けるなんて、そんな援助があるのか」と言っている。だから、軍事援助をやめ、戦争の犠牲者を減らすということだけで、積極的な意味をもち、非常に感謝されると思います。テロ特措法が廃案になるだけでもいいことです。

  アフガンの泥沼化に直面して、米国自身が変わろうとしているときに、日本政府だけが「国際社会」での責務といって軍事支援に固執するのは、非常に倒錯した感じがします。

  私は、また現場に戻ります。冬から最後の突貫工事になります。恐らく治安は来年の夏からもっとひどくなり、そうすると巻き添えを食らう恐れがあります。それくらい現地が窮迫しているということが日本に伝わっていないのが残念です。

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