++ 新証拠 高裁推論で却下  名張毒ぶどう酒 再審認めず ++

2012.5.26初版

新証拠 高裁推論で却下  名張毒ぶどう酒 再審認めず


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中日新聞2012年5月26日
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名張毒ぶどう酒 再審認めず

  名張毒ぶどう酒事件の第七次再審請求差し戻し審で、名古屋高裁(下山保男裁判長)が二十五日、奥西勝死刑囚(八六)の再審を認めないと決定したことを受け、奥西死刑囚の弁護団は三十日までに特別抗告する。今後の審理は最高裁に移るが、高裁への差し戻しや棄却などを判断するまでに一定の期間を要するとみられる。年齢や体調面から「今回の再審請求を事実上最後」と位置付けてきた奥西死刑囚に、再審の扉が開くことは難しい状況だ。
  差し戻し審の争点は、事件に使われた毒物が奥西死刑囚の当初の自白通り、農薬「ニッカリンT」だったかどうか、だった。事件当時の鑑定で、現場に残されたぶどう酒からニッカリンT特有の副生成物が検出されず、市販のぶどう酒にニッカリンTを混ぜた溶液からは検出された。この違いが、弁護団が第七次再審請求で提出した有力な新証拠だった。
  下山裁判長は、最新の科学鑑定結果を根拠に、この副生成物は、ニッカリンTに含まれる別の毒成分から「(水と化学反応する)加水分解の結果、生成される」と説明。毒物鑑定は事件の翌日から翌々日に実施されたため「加水分解されて、毒成分がほとんど残らず、副生成物も検出されなかった余地があると考えられる」と推論した。片方からしか検出されなかった矛盾はこれで説明でき、「毒物がニッカリンTでなかったとまでは言えないい」と判断した。
  検察側、弁護側は、この矛盾を説明するため、双方の主張に有利なように、持論を展開してきた。しかし、下山裁判長が採用したのは、検察働すら主張していなかった「加水分解して消えた」との自説だった。
  鈴木泉弁護団長は会見で「決定は検察官も主張していない事実、かつ今回の鑑定人さえ言及していないことを推論して判断しており、証拠に基づいていない。最初から結論ありきだ。化学の素人の裁判官が、推論に推論を重ねて再審の扉を閉めた。不当としか言いようがない」と述べた。

次の勝利信じる
  面会した弁護士を通じた奥西勝死刑囚の話
  きょうは残念でした。次の勝利を信じていますので、今まで以上のご支援をお願いします。頑張ります。

名古屋高裁決定の骨子
▼再審開始を認めた2005年の名古屋高裁決定を取り消す。再審請求を棄却する。
▼鑑定の結果、事件現場に残ったぶどう酒から、ニッカリンTに含まれる副生成物が検出されなかったのは、加水分解が進んだためだとみる余地がある。
▼毒物がニッカリンTであることと、当時の鑑定で副生成物が検出されなかったことは矛盾しない。
▼弁護団が握出したほかの新証拠を総合しても、ぶどう酒に農薬を混入できた者は奥西死刑囚以外にいない。
▼奥西死刑囚の自白が根幹部分で信用でき、奥西死刑囚を犯人とした事実認定に合理的な疑いを生じる余地はない。

【今後の流れ】
25日 原決定取り消し 再審請求棄却
再審不開始決定
(5日以内)
弁護側が特別抗告
最高裁で審理
  棄去
第7次請求終了
認める
名高裁に差し戻し
名高裁で再審公判へ

名張毒ぶどう酒事件
三重県名張市葛尾の公民館で1961年3月28日夜、地元の懇親会で白ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡、12人が中毒症状を訴えた。奥西勝死刑囚は「妻、愛人との三角関係を清算しようと農薬を入れた」と自白。翌月3日、殺人容疑で逮捕された。その後、否認、自白を繰り返し、公判では完全否認した。64年の津地裁は無罪、69年の名古屋高裁は死刑。一審無罪から二審で死刑は前例がない。72年、最高裁が上告を棄却、死刑が確定した。
  確定判決によると奥西死刑囚は、公民館で1人になった10分間にぶどう酒の王冠を歯で開け、茶畑で使うために買った農薬「ニッカリンT」を混入したとされた。

 名張毒ぶどう酒事件の再審開始が認められず「不当決定」の幕を掲げる弁護士=25日午前10時1分、名古屋高裁前で(畦地巧輝撮影)

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◇関連サイト◇
◯ JanJanニュース:  一日も早く再審の開始を――名張毒ぶどう酒事件   --> こちら
◯ 松山大学法学部・田村教授「名張毒ぶどう酒事件・(再審決定取消決定論説=学内限定)  --> こちら
◯ 奥西勝さんを守る東京の会  --> こちら


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