++ 『あの時、バスは止まっていた』高知・白バイ スクールバスに衝突 衝突の瞬間を検証してみる  警察・検察ストーリーで合理的な説明ができるか ++


2009.11.3 2008.8.21 2008.7.3初版

あの時、バスは止まっていた  警察ストーリーで合理的な説明ができるか 衝突の瞬間を検証してみる

   どの地点で大きな衝撃力が発生し、そして破壊したのか

お断り:
このページはブログの続編になります。そちらに概要を書いています。
■ 衝突の瞬間  破壊の大きさに見合う衝突時間が必要 --> こちら
    ■ ブログ「どこがどこに衝突したか 白バイとスクールバス」 --> こちら

どっちが本当の衝突地点?
 双方の相違点
弁護側

th_C-point_s.jpg th_C-point.jpg

バスは止まっていた。そこに白バイが突っ込んできた

実際に白バイが倒れていた地点が衝突地点と主張
警察・検察側 150 92

th_B-point_s.jpg th_B-point.jpg

道路の端から6.5mが衝突地点であり、そこから2.9m白バイを引きずった

言い換えれば、スクールバスが動いている途中に、白バイを跳ねたと主張

二輪車が、停止している乗用車の側面に直角に時速48kmで衝突する実車を使った実験と、そのシミュレーションをした結果がある。

■ ヤマハ発動機 二輪車の衝突解析 --> こちらのPDFファイル

この実験は二輪ライダー(ダミー)の胸部に受ける加速度の変化を数値として記録し、グラフに表すことで、衝突の瞬間を目視化するものです。それによると、衝突の瞬間から100ms(0.1秒)の間で衝突の大部分が終わってしまうものです。
もっと正確にいえば、衝突の瞬間から20ms後に始まり、100msまでの間の80ms時間の中で最大の衝撃が発生するという結果です。
よって、この0.1秒ほどのほんのわずかの時間の出来事が解析できれば、ライダーの胸部に受ける衝撃の度合が判明するということになります。

なぜこの衝突実験およびシミュレーションを引き合いに出したかといえば、裁判で認定された警察・検察の衝突ストーリーでは、

● 衝撃力が最大になる瞬間はいつなのか?
● それはどの地点で発生したのか?

のいずれもが、判然としてないからです。警察・検察の説明にもでてこないもので、不可解に思っていた視点です。

白バイ隊員が亡くなった重大な事故であったのに、検証が杜撰にされたままになっています。謎のまま放置することもできませんので、この視点から解析しようと考えています。その結果、真の衝突地点がどこであったかがあきらかになり、論争に終止符が打てるとみているからです。

裁判で認定された警察の衝突ストーリー

衝突地点と認定された地点(道路の端から6.5m)から、人の早足ほどのスピードで、さらにバスが約3mを進んだ地点でおもむろに白バイの部品が砕け散るというのが警察が主張している衝突ストーリです。事故現場の写真と警察の主張を総合すればそうなります。
本当にそのようなことで大きく破壊されただろうか?

※※ 大きな衝撃力が発生するか否かは衝突時間に左右される ・・・ここ最重要のポイント!
上記の実験が目に止まったのは衝突時間がはっきり計測できていた、からです。
これまでこの衝突時間の実体が不明でしたが、これが分からないとなにも計算できませんでした。偶然、メーカのサイトで見つけた次第です。
白バイが衝突した状況を見る場合も、この衝突時間がもっとも大きな要素になります。

衝撃力」が普遍的に定義されているわけでもなく、これだという計算式もないようです。そこを突きだしたらそれこそ収拾がつかなくなるのですが、しかしそれで手をこまねいていてもなにも得るものがないので何んとか数値に表わすべく、ここでは簡単に、

   力(N)=質量(kg)×加速度(m/sec2)

  を衝撃力とします。

  参考: 質量1kgの物体に、1m/sec2の加速度を生じさせる力を1N(ニュートン)という。
      宇宙空間で、他からの引力を考えなくていい場所では質量だけを考慮すればいいが、地球表面では質量1kgの物体に、
       9.81Nの重力で中心に引っ張られていることは常に念頭にいれておく。
       (1kg×9.81m/sec2=9.81N)。厳密には緯度により0.5%の違いがある。
      この物体に作用する重力の大きさのことを「重さ」あるいは「重量」という。
      重さ(重量)(N)=質量m(kg)×重力加速度g(m/sec2)


重量(装備を含めた白バイの全車重300kg+白バイ隊員の体重)はおおよそわかっています。またこの重量は速度によっても変化せず、一定です。
この変化しないのがポイントです。 よって、衝撃力の大小を決めるのは「加速度」のみ、となります。
実際に上述のメーカー衝突実験でも加速度がパラメータになっています。

白バイの重量を300kgとし、バスにひっかけられて引きずられ、そのまま3m進む間に速度がゼロになり、停止した地点で砕け散ったと理解できる現場写真と裁判での認定です。それらがすべて認定されているので、それを前提に具体的数値で考えてみます。
さっそく、その間の加速度を考えてみます。
バスが10km/hで走行中に衝突して空走の後、急ブレーキをかけて1.2mほどのスリップ痕をつけて停止したと認定されています。また、バスが白バイを3m引きずったと認定されているので、バスの動きと白バイのスピードはほぼ同じであったと推察されます。(合体して進んだと黒岩前交通部長が記者会見で説明している。)
合体したまま3m動いて、速度がゼロとなったことになります。

その動きの途中の厳密な速度変化は推測するしかありません。が、衝突した瞬間から停止すまでをざっと1秒とします。1.1秒とかもう少し長くなるかもしれません。ようは3m進むには、そのぐらいな時間しかかからないということです。

速度10km/hの合体したバスと白バイが1秒後に速度ゼロkm/hに減速したことになります。 加速度を計算すると、
加速度=(0-10000)/3600/1≒2.78[m/sec2]
と、とてもゆるやかな減速になります。
衝撃加速度Gで見れば 2.78÷1÷9.8=0.28G となり、せいぜいが原付自転車でどこかにぶつかった程度の衝撃という計算結果です。

ざっと机上の計算をしてみればこんなことですが、ところが実際の事故現場は全く様相が違っていました。
バスのバンパーは大きくひん曲り、白バイの左側面の出っ張り部分(バンパーなど)がことごとく破壊されていました。
そして白バイ隊員の胸を保護していたプロテクターが破損して胸部大動脈破裂が原因で亡くなりました。尋常ではない大きな衝撃力が加わったはずです。

いったい、この力はどこから湧いたのか

白バイの前輪部や左側面の出っ張った部分がバスの右前部に衝突したことで衝撃力が発生し、その結果フェンダーを変形させ、バンパーをひん曲げたと推定できます。このことに異論はでないでしょう。
バスの頑丈そうなバンパーが横から押されたように曲げられました。
大きな衝撃力が発生したはずです。しかも衝突時間が短くなくてはなりません。自動車工場にある5200トンの大型トランスファプレスなら時間を掛けてミシミシ、バリバリと対象物を変形させることはできるが、自重300kg、60km/hの白バイではそうはいきません。ざっと計算してみると、 300x60x1000/3600)/0.1 = 50000[N]

力(N)=質量(kg)×加速度(m/sec2)

加速度というのは単位時間あたりの速度の変化なので速度を時間で割って計算します。ということは分母にくる時間が、0.1秒のように短い時間が作れないと、大きな加速度は生まれません。大きな加速度が得られないと大きな衝撃力も生れないことになります。

警察ストーリーでは短い衝突時間が作れない
いろいろ検証しましたが、警察ストーリーではどうやりくりしても矛盾が生じてしまい、この短い衝突時間を作る地点が存在しないことがわかります。
この0.1秒ほどの短い衝突時間が作れないと、
バスのフェンダーが塑性変形し、バンパーがひん曲げられ、白バイの左側面の出っ張った部分が破壊され、白バイの各部が路面をこすって運動エネルギーの一部が摩擦熱に変化し、隊員は胸部に強い衝撃を受けて、そして白バイが走行してきた方向の前方に隊員が飛んだ、・・・・
とは、 ならないと考ます。

裁判で認定された警察の衝突ストーリーではどうしても衝突時間がダラダラと長くなり(3m引きずられる時間なので1秒ちょっとがかかるので) 、そんなダラダラして負の加速度が生じても大きな衝撃力は生まれず、その結果激しい塑性変形も起きないし、隊員も死亡に至るほどの衝撃力も発生しないとみるのが道理です。
これはとりもなおさず本当の衝突地点がどこだったかという問題にそのまま直結します。

   根拠もなく「衝突した、3m引きずった、ハネた」とゆってもダメ
      どの地点で大きな衝撃力が発生したかをちゃんと説明できなければ人々を説得できない


もう一度、警察・検察ストーリーをおさらいしてみると、
 ● 道路の端から6.5m地点でバスの右前に白バイがひっかかった。
    しかし、その地点では単にひっかかっただけで白バイもバスも隊員も強い衝撃は受けなかった?
    なぜなら、その地点には白バイの砕けた部品の破片が落ちていないから。
      ということは、なにも砕けなかったと言い換えられる。(写真がきっちり記録している)
 ● そして、そのまま白バイをひきずり3m進んでバスが停止していた地点で白バイの部品がこじんまりと砕け散った。
         (写真が記録しているとおり)
    言い換えれば、その地点の寸前で白バイの左側面は大破し、バスのフェンダーを塑性変形し、バンパーをひん曲げ、
     隊員は胸部に強い衝撃を受け、そして飛ばされたということになる。

   ※ ちなみにバスが白バイを引きずったと裁判が認定しているわけで、そうすると白バイとバスが合体したも同然のまま進み、同時に停止したことになる。

と、こういうことになります。

白バイが持っていた運動エネルギーがほぼゼロになりかけるその地点でフェンダーを変形させ、
      屈強なバンパーを曲げるような衝撃力が発生したことになるのだが・・?

それはあり得ないという結論になります。

いったいどこの地点で100ミリ秒(0.1秒)という短い瞬間である衝突時間が作られたというのか!?
警察・検察はこの衝突の瞬間をどう説明しようとするのだろうか


・・・ 警察・検察の衝突の瞬間を検証してみる  果たしてこれで誰もが納得するのか ・・・

KochiShototuPoint_s.gif KochiShototuPoint.gif


大きな破壊(強い衝撃力を作る)には短い衝突時間すなわち瞬間といえる短い時間(100ミリ秒以下)を作らないといけない
   ※ダラダラと時間を掛けても大きな破壊にならない!!! 大型プレス機じゃあるまいし・・・
 ※5200トンの大型トランスファプレスなら時間を掛けて変形させることも可能だが。

大きな衝撃力はどの地点で作られたか?(現場の状況を写真から推定してみる)

警察・検察はA点が衝突地点だとゆってるが、現場の状況と合致しない(破片がないから)
となると、B点の途中で大破壊が起きたことにしたい?(でも破片がないのでやはり無理)
速度がゼロになる寸前のB点で破壊が始まったことにしたい?

衝撃力≒ 力=質量×加速度 とすると、衝撃力を大きくするには加速度を最大にしなければならない
合体したまま、早足ほどの速度から限りなく速度がゼロになる寸前の地点までの3mの間で、どう計算すると大きなマイナス加速度が得られるのか!? 可能ならば教示してほしい

C点が衝突地点とするならば、破片が散らばっている状況とも合致し、
また、白バイが100kmほどのスピードで突っ込み、衝突の瞬間に速度がゼロになり最大の加速度が得られたことも無理なく説明できる。その瞬間で100ms以下の短い衝突時間が生まれ、大破壊が起きたこともなんら無理なく説明できる ・・・これが真実だ、と推定できる


・・・ 大きな衝撃力によって白バイの左側の出っ張り部分は原型をとどめないほど破壊されている ・・・
左右の支柱がずれているように見える。タイヤ、ディスクブレーキなどに目立った損傷が見られない
白バイの左側面2
白バイ左側面3
左側面の出っ張り部分が破壊され、原型をとどめていない
白バイ左側面4
白バイ左側面6
    
■ 「白バイ左側面 損壊写真」(カラー写真3枚) --> こちら

Wikipediaから拝借
・・・ 同型機・ホンダ VFR800P  左側面の出っ張っている風防(カウル)などの原型はこのようになっている  ・・・

VFR800P_s.jpg VFR800P.jpg



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