++ 冤罪・名張毒ぶどう酒事件 ”自白会見”運命の3分逮捕直後署内で 再審の可能性…最高裁が差し戻し++

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++ 名張毒ぶどう酒事件 ++

「約束」 〜名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯 --> ブログはこちら
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裁きの重み 名張毒ぶどう酒事件の半世紀
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最高裁の能書きではこうなっているけど・・・
 疑わしきは被告人の利益に
  ”被告人が罪を犯したかどうか
  その証明に疑問の余地がある場合
  裁判官は無罪を言い渡さなければならない”
ところが・・・
現場では真逆!
平然と有罪判決

”疑わしきは罰する”

※※ くどいですが、念のためここでも【再掲】しておきます。
  〇 司法を学ぶもの達には「推定無罪」という「音・おと」だけは徹底的に叩きこんでいるのに、いざ現場になってみると、真逆の「推定有罪」になっていること。
学生たちには「推定無罪だっ!」と教えておきながら、
そして最高裁だってそれをいいつづけ、ご丁寧にもホームページでそれを解説しているのに、
一審、二審の現場でも、最高裁の場でも 「推定有罪」が当たり前になっている現実をどう説明するんだよ」と、
こんど新たに就任した最高裁長官に尋ねてみたいです。
最高裁は下のページを臆面もなく掲げています。これで3回目でちょっとくどいとは思いますが、こういうことはなんべんも言い続けるのがいいと思うのでまたまた鬱陶しいスナップショットを貼っておきます。
ゆってることと、やってることがこれほど真反対だと、恥ずかしいやら呆れるやら。最高裁自身の足元を含めた司法の現場とあまりにかけ離れた「能書き」です。 --> こちら
「疑わしきは罰せず」が原則のはずだが

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「疑わしきは罰する」と、
これに書き換えないと有罪率99.9%の現実を説明できないっ!
Q.立証責任とは何ですか。 A.「疑わしきは罰せず」とか「疑わしきは被告人の利益に」という言葉は聞いたことがあると思いますが,刑事裁判では,被告人の有罪を確実な証拠で,合理的な疑いを入れない程度にまで立証することについては,検察官がその責任を負います。これが立証責任です。そして,検察官の方で立証を尽くしても,被告人を有罪とするために必要なある事実が存在するかどうかが立証できなかった場合には,その事実は存在しなかったものとして,被告人に有利な判断をしなければなりません。つまり,「疑わしきは罰せず」の原則により,無罪の判決を言い渡すことになります。

名張毒ぶどう酒事件:再審の可能性…最高裁が差し戻し

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■ 名張毒ぶどう酒 再審認めず 2012.5.26 --> こちら
■ 52年目の疑問 名張毒ぶどう酒事件 捜査「つぶし」甘く、半世紀経て凶器争点 2012.5.26 --> こちら
■ 新証拠 高裁推論で却下 名張毒ぶどう酒 再審認めず 2012.5.26 --> こちら
■ 農薬論争に新判断 名張毒ぶどう酒事件 再審認めず 2012.5.26 --> こちら
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NHK名古屋2012.5.25
名張事件 再審認めない決定

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名張事件 再審認めない決定
51年前、三重県名張市でぶどう酒に農薬が入れられ、女性5人が殺害された「名張毒ぶどう酒事件」で死刑が確定した死刑囚について、名古屋高等裁判所は「新たな鑑定結果を検討しても犯行に使われた農薬が本人が持っていたものと別だったとは言えない」と判断し、再審を認めない決定をしました。「名張毒ぶどう酒事件」は昭和36年に三重県名張市の地区の懇親会でぶどう酒に農薬が入れられ、女性5人が殺害されたもので、殺人などの罪で死刑が確定した奥西勝死刑囚(86)が無実を訴えて、昭和48年から再審を求めてきました。7年前、7回目の訴えに対し名古屋高等裁判所はいったん再審を認める決定をしましたが、別の裁判官が決定を取り消し、おととし、最高裁判所が審理を差し戻す異例の経緯をたどってきました。

最高裁は有罪の根拠とされた農薬の鑑定に疑問を投げかけ、名古屋高裁では、最新の技術を使ってあらためて鑑定が行われていました。この結果、名古屋高等裁判所は、「新たな鑑定結果をみてもぶどう酒に入れられた農薬が本人が持っていた農薬と別の種類だったとは言えない。そのほかの証拠を総合的に検討してもほかに農薬を入れることができた人はいないという判断は揺らがず、再審を認める理由はない」として再審を認めない決定をしました。
05月25日 10時50分


中日新聞2012年5月25日 クリック↓で原寸大
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名張毒ぶどう酒
再審可否きょう決定
名古屋高裁成分の特定焦点


  三重県名張市で一九六一年、農薬入り白ぶどう酒を飲んだ五人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」で、名古屋高裁は二十五日午前、奥西勝死刑囚(八六)の再審を開始するか否かを決定する。争点は、弁護団が出した新証拠のうち、最高裁が唯一、審理を尽くすよう求めた毒物が、当初の自白通り、農薬「ニッカリンT」だったかどうかだ。
  三重県衛生研究所は事件後、現場に残った白ぶどう酒(図中@)と、市販のぶどう酒にニッカリンTを混ぜた溶液(A)を鑑定した。

溶液からはニッカリンT特有の副生成物が出たが、ぶどう酒からは出なかった。明らかな違いだが、当時は「水と反応して消えた」と説明された。
  弁護団は今回の再審請求で、「副生成物は二日すぎても消えない」との実験結果を新たに提出。ぶどう酒と溶液の鑑定結果の違いは「事件の毒物がニッカリンTではなかったからだ」と主張した。
当時はこの副生成物が出ない農薬もあった。
  差し戻し後、高裁は昨年、ニッカリンTを再製造し、最新鋭の機器で鑑定。ニッカリンTに水分を混ぜた溶液(B)から、副生成物が検出された。弁護団の主張を裏付けた形だが、検察側は別の鑑定結果を重視した。

  当時、常識的な鑑定手法だったエーテル抽出(C)をすれば、今度は副生成物は検出されなかったからだ。弁護側は「当時と実験の条件が違ったため」と説明するが、検察側は「毒物はニッカリンTだったが、当時の手法では検出されなかった」と主張した。
  さらに、論点となるのは当時、ぶどう酒と溶液の二つともエーテル抽出したのか、ということ。鑑定人(故人)の公判証言から、「二つともしたと証言している」とする弁護側に対し、検察側は「ぶどう酒はしたが、溶液はしなかったと読み取れる」と説明し、食い違っている。
  再審開始か否か。決定を待つ奥西死刑囚の収監は死刑判決後、すでに四十三年。九年前に胃がんを手術し、今月上旬には炎にかかった。二十四日、面会した支援者によると「いよいよ明日やね」との問い掛けに「うん」とにこやかにうなずいたという。



名張毒ぶどう酒事件
三重県名張市で1961年3月、宴会のぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡、12人が中毒症状を訴えた。奥西死刑囚は「妻、愛人との関係を清算しようと農薬を入れた」と自白した。その後、否認に転じ、64年の津地裁判決は無罪、69年の名古屋高裁判決は逆転で死刑。72年、死刑が確定した。
  7度目の再審請求で、名古屋高裁が2005年、再審開始を決定。異議審、特別抗告審を経て最高裁は10年4月、高裁に審理を差し戻した。

エーテル抽出
検出したい物質を効率よく抽出するための手法。検査対象の溶液に有機溶媒のエーテルを混ぜてよく振り、エーテルに溶け出す化学物質と水に溶ける物質に選別。検出したい物質が溶けた溶液に、さらにエーテルを混ぜて振って分離する作業を繰り返して物質を濃縮する。最終的にはエーテルを蒸発させて濃縮された物質を抜き出す。

当時の鑑定結果(1961年)
犯行現場に残されたぶどう酒
市販のぶどう酒に市販のニッカリンTを混ぜた溶液
・A、B、Cは各成分
・Bが焦点の副生成物
(トリエチルピロホスフェート)
  ○…検出 ×…積出されず
   …薄く小さく検出

最新鋭の機器を使った成分分析鑑定結果 (2011年)
 ニッカリンTに水分を混ぜた溶液
 副生成物の含有率
 トリエチルピロホスフェート)24.7%
   エーテル抽出
 副生成物 ゼロ

名張毒ぶどう酒事件第7次再審請求の流れ
名古屋高裁
  2002年4月 奥西死刑囚が再審請求
  2005年4月 請求審 再審開始決定
          検察側が異議申し立て
  2006年12月 異議審 再審開始取り消し
           弁護側が特別抗告
最高裁
  2010年4月  特別抗告審 異議審の決定を取り消し
          差し戻し
  2012年 5月25日  差し戻し審判断 再審開始または不開始
中日新聞2010年4月7日

「今さら真犯人を…」 「毒ぶどう酒」住民から不安や怒り

2010年4月7日
供養塔
毒ぶどう酒事件の犠牲者をまつる供養塔と、事件現場の葛尾公民館があった広場(後方)=名張市葛尾で 写真

 6日、明らかになった最高裁の名張毒ぶどう酒事件の名古屋高裁への差し戻し決定。事件現場となった名張市葛尾地区の住民からは「犯人は奥西死刑囚で間違いない」との声が上がった一方、「50年近くたって今さら真犯人を調べられるのか」と漏らす住民もいた。
 この日、事件現場となった葛尾公民館跡のゲートボール場に人影は見えず、ひっそりと静まりかえっていた。そばにある犠牲者5人の供養塔には、最近手向けられた菊などが飾られていた。
 現在の区長、福岡芳成さん(61)は「今、地区では事件の記憶も薄れ静かになっているのに、また騒がしくなる」と話す。3年前に81歳で亡くなった母親の二三子さんが事件でぶどう酒を飲んで一時、重体になり、事件の記憶は消えていない。「今さら調べるといっても関係者は亡くなっているか高齢だ。難しいだろう」と指摘する。

名張地区
1961年に名張毒ぶどう酒事件が起きた名張市葛尾地区 写真

  事件発生後、医師として最初に現場に到着し、住民の治療にあたった集落近くの開業医武田優行さん(82)は「長年の服役はかわいそうだが、正直死刑が確定すると思っていた。裁判が何年もずるずると続いており、自分は第三者だが、(死刑か無罪か)どっちかに結論を決めてほしい思いはある」と話した。
 「何度裁判をしても同じことだ」。事件当時、懇親会に出席していた男性(70)はテレビで差し戻し決定を知り、怒りをあらわにした。「自白したのだから彼(奥西死刑囚)と確信している」と語気を強めた。
赤瀬川勝彦代表

「名張市奥西勝さんを支援する会」の赤瀬川勝彦代表 写真

◆支援する会代表「勝つまで健康保ち頑張って」  「獄死するのを待っているとしか思えない」。名張毒ぶどう酒事件で服役中の奥西勝死刑囚を支援してきた市民グループ「名張市奥西勝さんを支援する会」の赤瀬川勝彦代表(63)は6日、最高裁の高裁差し戻し決定に怒りをあらわにした。
 再審開始を求め20年にわたり活動してきた赤瀬川さんは今回、最高裁が再審を決定するかどうかの判断を「避けた」と指摘する。これまでに弁護側が科学的な新証拠をたびたび提出してきたことを挙げ「これだけやって差し戻すなんて、批判を受けるのがよほど嫌だったのだろう」と最高裁への不満を語る。  「奥西さんには石にかじりついてでも生きてもらわないと。勝つまでは健康を保って頑張ってほしい」。今後も署名運動や裁判所への要請行動を続ける。  (名張毒ぶどう酒事件取材班)

中日新聞2010年4月7日

証拠調べ効率化促す 名張毒ぶどう酒差し戻し

2010年4月7日 朝刊
 三重県名張市で1961年、ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」をめぐる奥西勝死刑囚(84)の第7次再審請求について、審理を名古屋高裁に差し戻した最高裁決定で、田原睦夫裁判官は補足意見で「事件発生から50年近く、今回の再審申し立てから8年近く経過しており、証拠調べは、必要最小限にして効率よくなされることが肝要だ」と述べ、差し戻し後の審理のあり方について異例の注文を付けた。
 最高裁決定は、いったん認められた再審開始決定を取り消した名古屋高裁決定(2006年)をあらためて取り消した。これにより、死刑の執行は停止された。
 決定を受けて記者会見した名張毒ぶどう酒弁護団の鈴木泉団長は「毒物鑑定という凶器の鑑定に疑問を呈したわけだから、『疑わしきは被告人の利益に』という刑事裁判の原則に照らせば、この段階で再審開始決定があってしかるべきだ」と疑問を投げかけた。
 決定は、犯行に使われた毒物の事件当時の鑑定結果について「証拠評価に疑問があり、審理をさらに尽くす必要がある」と判断した。決定は5日付。
 再審開始の方向性は示していないが、差し戻し後の審理は、毒物の成分をめぐる科学論争に絞って行われる。差し戻し審での証拠調べの結果次第では、再審の可能性も出てきた。
 特別抗告審の最大の焦点は、事件直後に三重県衛生研究所が実施した鑑定で、飲み残しのぶどう酒からニッカリンTの成分の一部トリエチルピロホスフェートが検出されなかった点をどう評価するかだった。
 ニッカリンTは、テップ剤という薬品を基本に加工された農薬の一種。奥西死刑囚は捜査段階で「ぶどう酒に入れた」と自白し、その自白調書が有罪の決め手とされてきた。
 最高裁決定は、そもそもぶどう酒にニッカリンTが含まれていなかったのか、鑑定の仕方で検出できなかっただけなのかを判断するためには、あらためて当時の鑑定と近い条件で鑑定を行うなど、審理を尽くす必要があると結論づけた。

◆最高裁決定骨子
  ▼名古屋高裁決定を取り消し、審理を同高裁に差し戻す
▼弁護団が新証拠として提出した農薬の鑑定結果に対して、高裁は科学的知見に基づく検討をしたとはいえず、推論過程に誤りがある疑いがある。事実は解明されておらず、さらに審理を尽くす必要がある
▼弁護団が提出した他の新証拠については、高裁が退けた判断に誤りはない

中日新聞2010年4月7日

84歳「早く再審を」 奥西死刑囚、執行停止に表情緩め

2010年4月7日 朝刊  女性5人が死亡した名張毒ぶどう酒事件から半世紀−。奥西勝死刑囚(84)の第7次再審請求特別抗告について最高裁は名古屋高裁に審理を差し戻す決定をした。奥西死刑囚は、いつ死刑が執行されるか分からない緊張から解かれ、表情を緩めた。事件の舞台となった地元の住民は「いつまで裁判が続くのか」と困惑の表情を浮かべる。奥西死刑囚の弁護団や識者からは、再審決定の判断を避けた最高裁の姿勢に「役割の放棄だ」と疑問の声が上がった。
 6日午後2時半、名古屋拘置所2階の面会室。「再審開始決定を取り消した決定を取り消し、差し戻したんです。死刑の執行停止も生き返った」。青いセーター姿の奥西勝に、弁護団の小林修(57)と鬼頭治雄(38)が経過を図に示して説いた。差し戻しの意味がのみ込めず、キョトンとする奥西。小林が「要するに勝ったんだよ」と続けると、84歳の死刑囚はようやく顔をほころばせた。「よかった、よかった」
  ただ、弁護団は素直に喜べなかった。その2時間前、便りは突然やってきた。愛知県一宮市の法律事務所。昼食のため外出しようとした弁護団長の鈴木泉(63)が、ポストの郵便物に紛れた茶封筒を見つけた。差出人は最高裁判所。分厚い感触に「開始決定か」と心が躍った。きびすを返し、はやる気持ちで封をちぎる。24ページに及ぶ決定書。目に飛び込んだ表紙の主文に言葉を失った。「なぜっ」
  最高裁決定を受けた記者会見で鈴木は茶封筒を掲げた。ギザギザに破かれたその口と、「人の命にかかわる決定」がそっけない形で送られてきた不満。それが期待と落胆の落差を浮き立たせていた。
 死刑囚の再審請求で最高裁が審理を差し戻したのは、後に再審無罪が確定した財田川事件以来33年ぶり。弁護団や支援者にとって「差し戻し」は意外だった。
 「疑わしきは被告の利益に」という刑事裁判の鉄則が再審請求審の判断にも適用されると判示したのは、最高裁の白鳥決定(1975年)。これを引き合いに、鈴木は複雑な思いを打ち明けた。「異議審決定が取り消された点に喜びを感じるのは否定しない。だが、異議審決定に疑問を感じたのならば、今回の最高裁決定は再審開始であるべきだった」
  「差し戻し審は『詰めの闘い』。もう少し頑張りましょう」。そう励ます小林と鬼頭に、奥西は前向きな言葉で応えた。「私はやっていません。冤罪(えんざい)です。差し戻し審で調べてもらい、1日も早く再審をしていただき冤罪を晴らしたい」。引き続き面会に来た特別面会人の稲生昌三(71)にも「頑張ります」を繰り返した。
 最高裁決定を「後にも先にもないヤマ場」と待ち焦がれてきた奥西。鈴木は「(最高裁が再審理を求めた)毒物鑑定を確固たるものにすることが私たちに突きつけられた課題だ」と前を見すえる。だが、次の「ヤマ場」がいつになるのか、今は誰にも分からない。
 (敬称略)
毎日新聞2010年4月6日 12時55分 更新:4月6日 14時22分
奥西勝死刑囚が収監されている名古屋拘置所=名古屋市東区で2010年4月6日午後1時21分、大竹禎之撮影
奥西勝死刑囚が収監されている名古屋拘置所=名古屋市東区で2010年4月6日午後1時21分、大竹禎之撮影

 三重県名張市で1961年、農薬入りのぶどう酒を飲んだ女性5人が殺害された「名張毒ぶどう酒事件」で、死刑が確定した奥西勝死刑囚(84)の第 7次再審請求に対し、最高裁第3小法廷(堀籠幸男裁判長)は5日付で、再審開始決定を取り消した名古屋高裁決定(06年)を取り消し、高裁に審理を差し戻 す決定をした。小法廷は「事件で使われた農薬と奥西死刑囚の所持品が一致するのか事実が解明されていない」と判断し、高裁に新たな鑑定を行うよう命じた。 再審が開始される可能性が出てきた。

 ◇農薬の再鑑定命じる

 決定は5人の裁判官全員一致の意見。事件発生から半世紀近くを経て、高裁で再審を開始すべきかどうかが改めて審理される。田原睦夫裁判官は「事件 から50年近くが過ぎ、7次請求の申し立てからも8年を経過していることを考えると、差し戻し審の証拠調べは必要最小限の範囲に限定し、効率よくなされる べき」との補足意見を述べた。
 7次請求審では、奥西死刑囚が混入したと自白した農薬「ニッカリンT」に含まれている成分が、飲み残しのぶどう酒から検出されなかった捜査段階の 分析結果の評価が争点になった。
 死刑を言い渡した名古屋高裁判決(69年)は「加水分解されれば成分が検出されないこともある」と判断したが、弁護側は異なる手法で行った新たな 鑑定を基に「成分が検出されないはずはない」と主張。名古屋高裁は05年にこの主張を認めて再審開始を認めたが、高裁の別の部は検察側の異議に基づき「ぶ どう酒の置かれた状況によって成分が検出されないこともある」と判断して取り消した。
 これに対し、小法廷は「混入されたのがニッカリンTではなかったのか、濃度が低く成分の反応が弱かったために成分が検出されなかっただけなのか、 高裁が科学的知見に基づく検討をしたとは言えない」と指摘。ニッカリンTを使って捜査段階と同じ方法で鑑定を行い、審理を尽くすよう求めた。

 ◇名張毒ぶどう酒事件◇

 61年3月28日夜、三重県名張市葛尾の公民館で開かれた懇親会に参加した女性17人が、農薬入りの白ぶどう酒を飲んで倒れ、5人が死亡、12人 が重軽傷を負った。「妻と愛人との三角関係を清算しようとした」と自白したとされる奥西勝死刑囚が逮捕、起訴され、1審津地裁は「自白は信用できない」と 無罪を言い渡したが、2審名古屋高裁が逆転の死刑とし、72年に確定した。過去6回の再審請求はいずれも退けられた。

中日新聞2010年4月6日 16時16分

再審の判断差し戻し 「名張毒ぶどう酒」で最高裁

2010年4月6日 16時16分
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三重県名張市で1961年3月、懇親会でぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」をめぐり、殺人罪などで死刑が確定した奥西勝死刑囚(84)=名古屋拘置所収監中=の第7次再審請求特別抗告審で、最高裁第3小法廷(堀籠幸男裁判長)は、犯行に使われた毒物について「証拠評価に疑問があり、審理をさらに尽くす必要がある」とし、名古屋高裁に審理を差し戻す決定をした。これにより死刑の執行は停止された。

 決定は5日付。第7次再審請求について、名古屋高裁はいったん決定した再審開始を2006年に取り消したが、最高裁が審理を差し戻したことで、再審開始の可能性も出てきた。再審を開始するか否かは名古屋高裁があらためて判断する。

 事件では、奥西死刑囚の犯行を裏付ける直接的な証拠がなく、有罪の決め手は「妻と交際相手の女性との三角関係を清算しようと、ぶどう酒に農薬のニッカリンTを入れた」とする捜査段階の自白調書だった。奥西死刑囚は起訴直前から無罪主張に転じていた。

 ニッカリンTは、テップ剤という薬品を基本に加工された農薬の一種。特別抗告審の最大の焦点は、事件直後に三重県衛生研究所が実施した試験で、飲み残しのぶどう酒からニッカリンTの成分の一部トリエチルピロホスフェートが検出されなかった点をどう評価するかだった。

 最高裁決定は再審開始を取り消した名古屋高裁決定が「毒物はニッカリンTだが、検体の絶対量が少なく衛生研究所がトリエチルピロホスフェートを検出できなかったと考えることも十分に可能」とした点を疑問視した。

 この点について「検体の量の点のみから成分が検出されなかった理由が見いだし難いなど、科学的知見に基づく検討をしたとはいえず、推論過程に誤りがある疑いがある」と指摘。衛生研究所の試験と近い条件であらためて試験を行うなど、審理をさらに尽くす必要があるとした。決定は第3小法廷所属の5裁判官全員一致の意見。

 特別抗告審で弁護側は、衛生研究所の試験でニッカリンTのトリエチルピロホスフェートが検出されなかったことから「奥西死刑囚が入れたと自白した農薬とは別の農薬が使われた疑いがある」と主張。自白に信用性はなく、再審決定と同時に釈放するよう最高裁に求めた。
 検察側は、トリエチルピロホスフェートが検出されなかったのは「その成分の発色反応が弱かったため」と反論。「犯行時間帯にぶどう酒に農薬を入れられたのは、奥西死刑囚しかおらず、自白には信用性がある」と主張していた。

 【名張毒ぶどう酒事件】1961年3月28日、三重県名張市の公民館で開かれた懇親会で、農薬が入ったぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡、12人が中毒症状を起こした。「妻と交際相手の女性との三角関係を清算しようとした」と自白した奥西勝死刑囚が殺人容疑などで逮捕、起訴された。一審津地裁は64年12月、証拠不十分で無罪を言い渡した。69年9月の二審名古屋高裁は、ぶどう酒瓶の王冠の歯形などから奥西死刑囚の犯行と判断し、逆転で死刑判決を言い渡し72年に確定した。奥西死刑囚は7回目の再審請求中だった。

(中日新聞)

冤罪:名張毒ぶどう酒事件 ”自白会見”運命の3分 逮捕直後署内で

中日新聞 平成18年12月27日 からの抜粋

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中日新聞 平成18年12月27日

”自白会見”運命の3分 逮捕直後署内で

  中日新聞2006.12.27
奥西死刑囚再審取り消し
逮捕直後署内で 当時取材柳川さん
45年後、今は疑問


あの三分間が、重かった--。
名古屋高裁が二十六日、奥西勝死刑囚吾)の再審開始を取り消した理由の一つとなったのが、逮捕直後に行われた同死刑囚の記者会見だった。犯行を認める発言をしたこともあり、同高裁は「自白は信用できる」とした。会見でマイクを向けたのは、当時NHK記者だった岐阜県御嵩町長の柳川喜郎さん(七三)。決定の支えとなった自らのインタビューを振り返り、「決定的証拠がない事件。再審を始めるべきだ」と複雑な心境を語った。@面参照

  「大きな事件を、自分のちょっとした気持ちから…。何とおわび申し上げてよいか分かりません」
  ぼさぼさの頭、落ちくぼんだ目。奥西死刑囚は終始、うつむいたまま、ぽつりぽつりと語った。
わずか三分間の短いやりとりだった。

一九六一年四月三日の正午すぎ、三重県警名張署の宿直室で、異例の容疑者の記者会見が行われた。事件発生から七日目。自白の模様はテレビ中継され、新聞各紙にも載った。

  「はめられた」。奥西死刑囚は四十五年たった今も、このインタビューを悔やむ。「警察から『家族を救うために会見して謝罪しろ』と言われ、取調官が書いた文を(暗記して)読んだだけ」と裁判官にあてた手記でも訴えた。

  柳川さんは当時、NHKの三重県警担当キャップ。記者クラブの代表取材の一員として、奥西死刑囚の話を聞いた。
  柳川さんによると、会見は「報道陣が警察に押し込む形で」実現した。
その前日、県警幹部が「奥西の妻」犯行説を明らかにしたばかり。一晩で犯人が一転したことに「記者たちはいきり立っていた」という。
  待ち構えた容疑者の第一声。「ちょっとした気持ちから…」。冒頭の言葉に柳川さんは「真犯人」と直感したという。
  うなずける。本当の動機はそんなものだろう。
単純に困らせてやろうとしたのだ。「うーん」。
迫真の受け答えに次の質問が思い浮かばなかった。

  ただ、その後の司法判断は無罪から死刑に、そして再審開始決定から取り消しに。裁判官によって判断が分かれる数奇な展開に疑問は膨らんだ。
「有罪の根拠は、自白を含め状況証拠の積み重ねだけ。疑わしきは罰せず、だ」と話す。
   この取材を機に、人間は判断を誤る」と、死刑廃止論に傾いた。自身は十年前、暴漢に襲われ、瀕死(ひんし)の重傷を負う被害者になった。それでも、いくら犯人が憎くても、死刑はいけないと思う。
柳川さんは、奥西死刑囚に呼び掛ける。「お互い生きているうちに、もう一度会ってみたい。無実を訴えるなら、今度は目と目を合わせて」

上図、逮捕直後、記者会見で”自白”する奥西死刑囚。手前右が当時NHK記者だった柳川喜郎・岐阜県寺卸嵩町長=1961年4月3日、三重県警名張署で 下図、当時の奥西死刑囚について話す柳川町長=同町役場で

「無実訴え続ける」奥西死刑囚

 「命の限り無実を訴え続ける」。奥西死刑囚は二十六日午後、面会のため名古屋拘置所を訪れた特別面会人の稲生昌三さん(六七)に、こう話した。
  面会室では二人とも涙をこらえて向かい合った。「奥西さんは、今ま奥西死刑囚で見たこともないような厳しい表情だった」という。
  再審への道がさらに開かれると信じていた奥西死刑囚はこの日、支援者から「クリスマスプレゼント」として差し入れられた灰色のジャケットと、タートルネックのセータを着て決定を待った。しかし、拘置所内で渡された決定書は「原決定を取り消す。再審請求を棄却する」。
  奥西死刑囚は「弁護団の皆さん、支援者の皆さん、もう一つ大きな苦労をお掛けしたい」と語り、「妹に『気落ちしないよう。わしも元気で、元気で頑張る』と伝言してほしいーと頼んだ。
  再び死刑執行の恐怖にさいなまれる毎日が訪れた奥西死刑囚に、「最高裁では勝とう」と語りかけたという稲生さん。別れ際、アクリル板越しに手を差し出して握手をするまねをするとへ死刑囚は握手のポーズで応じたという。

ブログから後半を再掲
  ■ 「倒錯した論理、詭弁を弄する裁判官  国民が不幸になるだけ」 --> こちら

倒錯した論理、詭弁を弄する裁判官  国民が不幸になるだけ

1961年、5人が殺害された名張毒ブドウ酒事件
すでに再審請求を6回行い、7回目で最先端の分析機器で解析した結果を新証拠として提出したのに、それすら却下する裁判所とはいったいなんだろうか!?
古過ぎて残ってないだろうと思われていた農薬ニッカリンTも見つかりそれを最新鋭の分析器で調べて新証拠として提出したのに、である。

47年前(1961年)5人が殺害された「名張毒ブドウ酒事件」
無実を訴える奥西死刑囚は6回再審請求したが棄却
ところが6年前(2002年)、凶器について決定的な新証拠が見つかった
自白では凶器はニッカリンTという農薬でブドウ酒に混ぜたとされる
ニッカリンTにはトリエチルピロリン酸という成分があり
実はこれはブドウ酒からは見つからなかったため、当時鑑定で「水と混ざって分解した」とされた

私はこれを見たときに「えぇ、本当だろうか」と
ここになにか隠された問題があるんじゃないというふうにおもったんです
 (野嶋真人弁護士)

弁護団は30年以上も前に製造が中止されたニッカリンTを一年以上かけて探し出し最新機器で分析
すると

  ニッカリンTには問題の成分は必ず含まれているということがはっきりしました。(野嶋真人弁護士)
トリエチルピロリン酸は水と混ざってもほとんど分解されず残ることがわかった
つまり毒ブドウ酒にはトリエチルピロリン酸がなかったことは

凶器がニッカリンTではなかったことを意味したのだ
36年間凶器とされたものが凶器ではなかった

この新証拠をもとに第7次再審請求を行い認められた
2006年9月名古屋高裁
ところが・・・
門野博裁判長は新たに鑑定することもなくトリエチルピロリン酸は水で分解されるという40年前の資料を根拠に「毒物がニッカリンTだった可能性もある」と結論付け再審開始決定を取り消したのだ
弁護団に協力した専門家も呆れる

弁護団の方はですね、何年もかかってほんとに地道に科学的な検証を積み上げて証拠として提出してものであると
ところが判決文には科学的な根拠は乏しい
 (横浜総合高校岸川卓史教諭)
キャプション ナレーション:青色 証言:赤色

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ニッカリンT・・・トリエチルピロリン酸が含まれる
毒ブドウ酒・・・・トリエチルピロリン酸は検出されなかった(当時の鑑定では)
結局、「水と混ざって消えた」

47年前(1961年)5人が殺害された「名張毒ブドウ酒事件」
無実を訴える奥西死刑囚は6回再審請求したが棄却
ところが6年前(2002年)、凶器について決定的な新証拠が見つかった
自白では凶器はニッカリンTという農薬でブドウ酒に混ぜたとされる
ニッカリンTにはトリエチルピロリン酸という成分があり
実はこれはブドウ酒からは見つからなかったため、当時鑑定で「水と混ざって分解した」とされた

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私はこれを見たときに「えぇ、本当だろうか」と
ここになにか隠された問題があるんじゃないというふうにおもったんです
 (野嶋真人弁護士)
弁護団は30年以上も前に製造が中止されたニッカリンTを一年以上かけて探し出し最新機器で分析すると 

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ニッカリンTには問題の成分は必ず含まれているということがはっきりしました。(野嶋真人弁護士)
トリエチルピロリン酸は水と混ざってもほとんど分解されず残ることがわかった
つまり毒ブドウ酒にはトリエチルピロリン酸がなかったことは

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凶器がニッカリンTではなかったことを意味したのだ
36年間凶器とされたものが凶器ではなかった

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この新証拠をもとに第7次再審請求を行い認められた
2006年9月名古屋高裁
ところが・・・
門野博裁判長は新たに鑑定することもなくトリエチルピロリン酸は水で分解されるという40年前の資料を根拠に「毒物がニッカリンTだった可能性もある」と結論付け再審開始決定を取り消したのだ
弁護団に協力した専門家も呆れる
弁護団の方はですね、何年もかかってほんとに地道に科学的な検証を積み上げて証拠として提出してものであると
ところが判決文には科学的な根拠は乏しい

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テレビ朝日・サンデープロジェクト シリーズ「言論は大丈夫か」J 2008.4.13 より、
『本当に「推定無罪」か -閉じられる再審の扉-』から抜粋したページをアップ
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