++ 統合エア・シー・バトル構想の背景と目的 ++



2013.4.24初版

統合エア・シー・バトル構想の背景と目的

       もくじ
はじめに
1 JASBCの目的等
 (2) JASBCの目的
 (3) JASBCが想定する作戦の様相
   イ 米軍及び同盟国の対応
2 JASBCの背景
3 中国の軍事的行動と米国の対応
おわりに
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海幹校戦略研究 2011 年 12 月 (1-2)

統合エア・シー・バトル構想の背景と目的
― 今、なぜ統合エア・シー・バトル構想なのか ―


木内 啓人


はじめに

米国防総省は、2010年2月1に議会に提出したQDR2010において、現在行われているテロとの戦いを最優先課題に位置付ける一方で、「将来において最も蓋然性が高く、死活的に重要な脅威に備える」ことを戦略目標として明示した※1。統合エア・シー・バトル構想(Joint AirSea Battle Concept:JASBC)は、その戦略目標を達成するための一手段として開発される※2。
米国防総省が認識する「将来の脅威」とは何か。それは、「戦力投射能力及び侵攻に対する抑止、並びに同盟国等の救援のための行動に対する潜在的脅威」である3。これらは、中国やイランなどが身に付けつつある「アクセス阻止(Anti-access)」及び「領域拒否(Area-denial)」の能力(戦略)によってもたらされる。「アクセス阻止」とは、前方展開基地などの固定地域や軍事目標への接近(戦域への戦力の展開、利用)を阻止することであり、「領域拒否」は、特定の地域における行動の自由を制限することを狙いとし、それらの対象領域は、海、空、陸、宇宙及びサイバー空間の全次元にわたる4。
なかでも、米国防総省が脅威の主たる対象とみているのは、中国のアクセス阻止/領域拒否の能力である5。米国は、中国を脅威であるとは公言していないが、QDR等の戦略文書や「中国の軍事力6」報告書等を分析すれば、国防総省が脅威の主対象としているのは中国であることが見て取れる。米軍がJASBCを開発する背景には、中国のアクセス阻止戦略によって米軍の圧倒的な優位性が現実に失われつつあるとの脅威認識がある。そして、対テロ戦争が長期化し、国内経済が低迷を続ける中で、今「将来の脅威」への対策を講じなければ、米国にとって死活的に重要な地域へのアクセスが今後困難になるとの危機意識がある7。

JASBCは、米軍のみを対象とした構想ではなく、同盟国である我が国に対して責任と任務分担の覚悟を求める米国からのメッセージでもある8。中国を主たる対象としたJASBCにおいては、我が国が果たすべき役割は極めて大きい。また、その成否は我が国の安全保障環境に直接影響を及ぼす。このため、米軍がJASBCを開発する目的を正しく理解するとともに、その背景にある脅威認識を米国と共有する必要がある。
このような観点から、本稿は米軍がJASBCを開発する目的及びその背景にある脅威の本質を明らかにすることを狙いとして論述を展開する。


1 JASBCの目的等

(1) JASBC開発の経緯
JASBC開発の出発点は、冷戦後の1990年代初頭(1992-1993)にまでさかのぼる9。米国防総省ネット・アセスメント局(Office of Net Assessment)10のマーシャル(Andrew W. Marshall)11やクレピネビッチ(Andrew F. Krepinevich,Jr.)12などによって必要性が提唱されたものが、中国等の脅威の顕在化により約20年後に再び脚光を浴びたのである13。
冷戦の終結に伴い、ネット・アセスメント局は、第1次湾岸戦争において精密誘導兵器の有効性が証明されたことによって今日の紛争がどのように変化し得るのかという点について分析を始めた。分析はRMAの評価とともに行われ、1993年11月に次のように結論付けた。
「技術の拡散によって、出現しつつある競争相手(米軍に比肩する軍事力を備え得る国:中国、イラン等)はさらに強化され、第3世界の多くの国々はより破壊力のある長射程の兵器を保有する。紛争への介入(戦力投入)の様相は劇的に変化し、長射程の兵器と近隣の同盟国の兵器によることとなる。シンガポールやスービック、クラーク等の前方展開基地は、弾道ミサイルや巡航ミサイル、高性能航空機による遠距離攻撃システム、さらには精密誘導爆弾や核、化学兵器等の大量の長距離攻撃システムによって突如として脆弱性をさらし、侵攻に対する抑止効果を失うこととなるであろう。伝統的な空母打撃群や水上機動部隊は、強制介入のために必要な機動性及びステルス性を有していない。現在の軍の構成では、海軍の前方展開兵力によって将来の危機に対処することは困難である14。」
さらに1996年には、米海軍及び空軍のトップがネット・アセスメント局と同様の懸念を示し、この問題は翌1997年に米国議会の決定によって設置された国防委員会(National Defence Panel:NDP)15へと波及した16。同委員会は、「前方展開基地に対する脅威は今後ほぼ確実に増大し、2010年から2020年の間に現実のものとなるであろう。米国は、将来の戦闘と迅速な戦力投射の要求に応えるため、新たな技術と軍の運用構想及び態勢の変革によって優位性を確保しなければならない17。」と結論付けた。
しかしながら、国防委員会の報告は軍の改革に関する具体的かつ合理性のある提案としては不十分であったことから、長期的な国防計画の見直しには十分に反映されなかった18。さらに、2001年に生起した米国同時多発テロによって、将来の「台頭する国家」に対する対処に代わり、現在及び近い将来に焦点を当てた「テロとの戦い」が国防上の最重要課題に位置付けられることとなった19。
とはいえ、米国は、9.11のテロを契機に中国との協調路線を歩みながらも軍事的には中国を潜在的脅威と位置付けており、中国に対する警戒を怠っていたわけではなかった。米軍・国防総省は冷戦後に中国等の台頭を見据えた世界規模での前方展開戦略の見直し・再編(Global Posture Review: GPR)を行ったが、将来の地域紛争やアクセス阻止戦略等に対処するため、2001年にはトランス・フォーメーション(各軍の変革)を新国防戦略の核に位置づけた20。そして、米海軍が2002年に「シーパワー21」という新しい戦略構想を導入すると21、米空軍は2004年に「グローバル・ストライク構想」を立ち上げた22。
だが、軍として統一された脅威認識や戦略思想に基づくことなく各軍が個別に描いた軍備計画や構想は、将来、西太平洋で生起する可能性がある中国との紛争には十分な効果が望めず、かつ高いコストを強いるものであった23。
結局、米軍がJASBC構築のための作業を実質的に開始するのは、2000年代後期まで待たねばならなかった24。この間に中国は著しい経済発展を背景に軍事力の強化と近代化に取り組み、米国の懸念は急速に現実味を帯びることとなった。JASBCの構築作業は、マーシャルの提言を受け入れたゲイツ国防長官の命令によって、米太平洋空軍司令官(現空軍副参謀総長)チャンドラー大将(Gen.Carrol H.Chandler)のもと、米海・空軍、国防総省ネット・アセスメント局、及び民間のシンクタンクであるCSBAとのタイ・アップによって開始された25。検討チームは3年間にわたり6回にも上るウォーゲームを実施し、結果は構想の草案として統合参謀本部議長及び海・空軍のトップにそれぞれ報告された。そして、2009年9月、米海軍作戦部長と米空軍総参謀長はJASBC構築のための覚書に署名した。本合意に基づき、ついに米海軍及び空軍によるドクトリン策定のための具体的な検討作業が開始されたのである26。

(2) JASBCの目的
ゲーツ国防長官(Robert M. Gates)は、2010年5月3日に行われた米国海軍協会の演説において、「米軍が前進するためには革新的な戦略と統合への指向が必要である。このコンセプト(JASBC)は、20世紀の最後にエア・ランド・バトルがそうであったように、21世紀の初めにおける米国の抑止力となる可能性を有している。」と述べた27。
JASBCの第1の目的は、中国に対する戦略的抑止態勢を構築し、米国にとって死活的に重要な地域の覇権を目指す中国の意図を挫くことにある28。QDR2010においては、アクセス阻止の環境における敵対者として、中国の他にイラン、北朝鮮、さらにはヒズボラ等の非国家主体をも加えて例に挙げ、「海外に戦力を投入する作戦を遂行する米軍は、将来、アクセス阻止の戦略によって無数の挑戦を受けるであろう29。」と予測している。
だが、米軍が主たる脅威として認識しているのは中国であり、JASBC開発の主たる目的は、将来にわたり米国の軍事的優位性を維持し、中国に対する戦略的抑止態勢を確立することにある。冷戦期においては、米軍に対する最も厳しい挑戦者はソ連であったが、今日の中国こそが、米軍にとってはるかに深刻なアクセス阻止/近接拒否能力を備えた挑戦者の象徴なのである30。
JASBCは、アクセス阻止の環境下における攻撃を抑止し、軍事作戦の全範囲において敵を打破するための構想であるが31、CSBAのレポートは、JASBCの最も重要な目的は「戦争に勝利すること」ではなく、西太平洋における通常兵力による軍事バランスを維持し、「紛争を抑止すること」であると強調している32。米軍がJASBCを開発し、QDR2010において公表した狙いはそこにある。JASBCは、言わば「心理戦」の一部であるとも言われる33。抑止が機能するには、抑止する側がその国の安全や国際秩序を守るという「公約」を実行し得るだけの「能力」とその「意図」をもっており、そのことが被抑止側に「伝達」され、「認識」されなくてはならない。すなわち、被抑止側が抑止する側の威嚇をただのブラッフ(こけ脅し)ではなく、本物であると受け取るとき、威嚇は信憑性をもち抑止が効く34。米国は、西太平洋から中東にかけての地域の覇権を目指し急速にアクセス阻止の能力を向上させている中国に対して、米国が同地域に今後とも関与していくという確固たる意志を示したのである。
JASBCの第2の目的は、将来にわたって米軍の優位性を維持するため、JASBCを出発点として米国内における脅威認識を統一し、軍事戦略の重心を従来の脅威から将来の脅威へと転換させることにある。ゲーツ国防長官は、ネイビー・リーグにおける演説で、「CVBGを中心とする海軍戦略は1942年以来全く進歩がない。11隻の空母や10隻の強襲揚陸艦は妥当か。そもそも第2次大戦で日本を破ったドクトリンが適用できるか。革新的な戦略・統合作戦に指向が必要だ。」と述べ、もはや空母を中心とする米海軍の戦略思想が時代遅れであることを指摘した35。そして、5年間で約14兆円もの経費を削減し、その中から約9兆円を将来の必要な分野に再投資する案を発表している36。
地理的縦深性を持つ中国のアクセス阻止の戦略に対抗することを目的としたJASBCを成功させるには、遠距離打撃戦力の向上が重要な鍵を握っている37。米軍は、冷戦終結後に空軍の遠距離打撃戦略を見直し、次期遠距離打撃戦兵力の整備を中止した38。だが、新たに出現した中国のアクセス阻止の環境下においては、在日及び在韓米軍の基地を利用することは危険である上、空母を始めとする戦力投射のためのプラットフォームが沿岸に近接することもできない。また、グアムやハワイ、ディエゴガルシアといった米軍基地からは作戦地域までの距離が遠く、縦深性と抗たん性を有する中国の軍事目標を攻撃することが困難である39。このため、米軍は空母や戦車を中心とした兵力から遠距離打撃能力を中心とする新たな兵力組成への転換を図るとともに、ミサイル攻撃に耐えうる格納庫や滑走路、さらにはテニアン、サイパンといった新しい前方基地の開発を含む大規模な軍事態勢の見直しが急務となっているのである40。
一方で、JASBC開発のメッセージは、米国内のみならず、同盟国や協力国にも向けられている。マレン(Michael.G.Mullen)統合参謀本部議長は、2010年5月26日の空軍士官学校卒業式において、「新たなコンセプト(JASBC)は、軍種間や省庁間、そしてさらには国家間の縦割り意識をいかに打ち破るかの最良の例となる。我々は官民の努力を結集し、長年の同盟国及び新たな協力国とも緊密な連携をしていかねばならない。」と述べている41。
米国防総省がJASBCの開発を公表した目的は、同盟国や安全保障上の協力国と脅威認識及び作戦思想を共有するためである。JASBCの開発によって同盟国の米軍に対する信頼を維持することも狙いの一つであるが42、中国からの攻撃による被害を局限しつつ西太平洋からインド洋にわたる広大な地域において作戦を遂行するためには、既存の前方展開基地や後方補給ルートの抗たん化に加え、中国のミサイル攻撃圏外に位置する新たな展開基地の確保が不可欠である。このため、米軍は同盟国及びその他の協力国の支援なしには作戦が遂行できないのである43。
冷戦期のエア・ランド・バトルは、公表されることでNATO軍や他の地域の同盟国軍隊との共同要領、さらには戦争の原則に類するものまでを広範に包含するドクトリンへと発展し、それは新装備の導入及び新たな組織の編成を促進することにもつながった44。そして、革新的な戦術と装備による積極的な訓練の実施は、エア・ランド・バトルの実効性を高め、欧州正面における軍事バランスを回復させ、ソ連の西ドイツへの侵攻を抑止するという戦略目標の達成に寄与した45。このような過去の経験が活かされ、21世紀においては、JASBCがエア・ランド・バトルの後継者としての役割を担うことになったのである。

(3) JASBCが想定する作戦の様相
JASBCは現時点では開発段階にあるが、本項では、米軍がいかなる脅威を想定し、米軍及び同盟国に何が求められているかを明らかにするため、CSBAの研究資料を中心に、JASBCが想定する作戦の様相について分析、整理する。

ア 中国軍の行動
中国軍は、絶対的な戦力に勝る米軍と対等に戦おうとは考えていない。中国軍の戦法の主軸は、通常戦力のみならず、弾道ミサイル、衛星破壊兵器やサイバー戦、さらにはゲリラ戦等を組み合わせ、あらゆる次元において米軍の脆弱性(アキレス腱)をつくことである。敵の最も重要な目標に先制攻撃を加え、自軍よりも進んでいる敵の持つ強みを相殺(無力化)し、主導権を握るための戦力は、「暗殺者の棍棒(assassin’s mace)」と呼ばれている46。中国軍が米軍のアキレス腱として捉えているのは、米軍の兵力展開の基盤となる前方展開基地及び航空母艦、そしてRMAによってもたらされた米軍の戦闘基盤であるC4ISR機能である。中国軍は、これらを封殺することによって米軍の戦力展開基盤を喪失させることに加え、情報戦(心理戦及びメディア戦)の一環として世論を惹起し、中国への介入を断念せざるを得ない状況に陥らせることを狙いとしている47。
中国軍は、短期戦での勝利を企図して米軍が行動を開始する前に大規模な空爆や弾道ミサイル攻撃などによる在日米軍基地やグアムの米軍基地等への直接的な先制攻撃を行い、米軍の作戦能力を殺ぐ48。〔表1〕同時に、弱点となるC4ISR機能や補給能力の低下を狙う間接攻撃手段(対衛星攻撃:ASATやサイバー攻撃、電子戦など)を併用し、米軍のアクセスを阻止する49。さらには、対艦弾道ミサイルや外洋に展開した潜水艦、水上艦の対艦巡航ミサイル及び機雷等によって空母を始めとする米海軍の海上兵力の近接と自由な行動を拒否し、第2列島線以遠(中国沿岸の1500Nm以遠)に排除することを企図する50。

〔表1〕
アジア太平地域の米軍基地に指向可能な中国のミサイル戦力
AirSeaBattle1.gif
基 地 中国からの距離 攻撃可能な中国のミサイル戦力
オサン(韓 国) 400km 弾道ミサイル:480基
巡航ミサイル:350基
クンサン(韓 国) 400km 弾道ミサイル:480基
巡航ミサイル:350基
嘉手納 650km 弾道ミサイル:80基
巡航ミサイル:350基
三 沢 850km 弾道ミサイル:80基
巡航ミサイル:350基
横 田 1,100 km 弾道ミサイル:80基
巡航ミサイル:350基
アンダーセン
(グアム)
3,000km 中距離弾道弾(可能性有)
潜水艦発射型弾道弾
巡航ミサイル(航空機発射型)
出典:U.S.-China Economic and Security Review Commission,2010,p.90をもとに筆者作成。

中国軍は、現状において東アジアにある6箇所の米軍基地のうち5箇所を弾道ミサイル及び巡航ミサイルで直接攻撃することが可能であり、残り1つ(グアムのアンダーセン基地)については間もなく攻撃可能となる。

イ 米軍及び同盟国の対応
米軍は、これらの中国軍の企図をかわす(off set)ための作戦を遂行する。米側の狙いは、中国軍による初期の攻撃による被害を局限し、米軍にとって有利と見積もる長期戦に持ち込むことにある51。作戦にあたっては、日本とオーストラリアが同盟国として行動するとともに海・空兵力が一体となって任務を遂行する。この際、海、空、宇宙及びサイバースペースとのあらゆる次元において圧倒的な優位を保つことが前提となる。作戦は次の2つの段階に区分され、陸軍や海兵隊の投入は、空・海の優勢が確立し、陸上戦闘の態勢が整った後に実施される52。

(ア) 第1段作戦
a. 米軍及び同盟国軍は先制攻撃に耐え、基地及び兵力の被害を局限する。
先制攻撃の兆候を捉え、空軍機は一時的に中国のミサイル攻撃圏外の飛行場(テニアン・パラオ、サイパン等)へ避退する。この間、海軍及び同盟国のイージス艦は、地上の部隊とともに前方基地のミサイル防衛に当たり、潜水艦は、対潜水艦戦等の任務に従事するため所要の海域に展開する。
本構想上のネックは、敵の大規模な先制攻撃に在日米軍及び自衛隊施設が耐え得るかという点にある。そのためには、米軍が避退できる時間的余裕をもってミサイルによる先制攻撃の兆候を察知し得るシステムを構築するとともに、グアムや日本にある所要の指揮通信システム及び主要基地の抗たん性、回復能力の向上、さらには基地施設の分散化が求められる53。
b. 中国軍の戦闘情報ネットワーク(Battle Network)を盲目化する。
JASBCにおいては、戦闘の鍵を握る緊要な目標を捕捉し、攻撃すること(Scouting Battle)が戦闘の中心となる54。作戦の重心は、敵の戦闘情報ネットワークを盲目化し、戦闘情報ネットワークの優越を獲得することにあり、本作戦における緊要な目標は、中国のアクセス阻止戦略のアキレス腱となる遠距離情報偵察・攻撃システムである。
作戦は宇宙・サイバー空間及び水中を含んで遂行され、地上施設への精密爆撃やサイバー攻撃、電磁攻撃、さらには水中通信網の破壊等によって敵の宇宙監視システム、衛星破壊システム、OTHレーダー及び情報通信網等を無力化する。
c. 中国軍の遠距離情報偵察(ISR)・攻撃システムを制圧する。
敵のミサイル脅威に対抗して空母を含む海軍の重要目標の行動の自由を確保するため、空軍は敵の宇宙配備型洋上監視システムの盲目化を図るとともに遠距離打撃兵力によって敵の情報通信網及び攻撃システムを無力化する。加えて、陸上基地の被攻撃機会の低減を図るため、スタンドオフ兵器や長距離精密爆撃によって敵の地上配備型遠距離水上監視システム及び弾道ミサイルの発射基を破壊する。海軍の潜水艦及び空母艦載機(航続距離の長いステルス機を運用している場合)等は、空軍による敵の防空システムの攻撃を可能にするため、敵防空システムの偵察及び攻撃支援を行う。

d. 空、海、宇宙及びサイバー空間を制圧し、維持する。
各種作戦を継続する。この際、空母艦載機は空中給油機や支援機の活動を可能にするため、UAV等の敵偵察機及び戦闘機を攻撃する。

(イ) 第2段作戦
a. あらゆる領域において主導権を奪回し、維持する作戦を実行する。
日本の防空及びミサイル防衛機能を強化するとともに、制空権を東シナ海から琉球列島まで拡大する。さらに、弾道ミサイル撃破及び遠距離情報偵察・攻撃システムの制圧作戦等を、スタンドオフ及び突破型の攻撃を併用して継続する。航空機による水上打撃戦及び琉球列島ラインのバリアを中心とした対潜水艦戦を継続的に実施する。
b. 「遠距離封鎖(distant blockade)作戦」を遂行する。
中国が輸入する石油の約80%はマラッカ海峡を経由している。米軍及び同盟国は、南シナ海からインド洋にかけてのチョーク・ポイントにおける封鎖を企図し55、空軍は、ステルス爆撃機による機雷の敷設等によって海軍の対潜水艦戦や封鎖作戦を支援する。〔図1〕
c. 作戦レベルにおける後方支援態勢(兵站)を維持する。
基地機能を維持するため、同盟国を含む地上部隊は、基地被害の早期復旧を図る。また、通商ルート維持のため、同盟国及び米海軍は、対潜水艦戦を中心として重要航路及び港湾の防護にあたる。〔図2〕
d. 工業生産量(特に精密誘導兵器)を向上させる56。

〔図1〕
中国のSLOC(Sea line of Communication)
AirSeaBattle2.jpg
出典:Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China,p.2.1

〔図2〕
米軍及び同盟国の潜水艦戦・対潜水艦戦重点海域
AirSeaBattle3.jpg
出典:Air-Sea Battle, A Point of Departure,operational concept ,p.72.


2 JASBCの背景

本節では、QDR及び「中国の軍事力」報告書を中心に分析し、JASBCの背景にある米国の脅威認識及び脅威の本質を明らかにする。

(1) 中国に対する脅威認識の顕在化
冷戦後、米国は軍事力の圧倒的な優位性を背景に地球規模で軍事力を展開し、国際社会の安定化を図る戦略を採ってきた57。このため、米国は中国等の潜在的な地域覇権国家の台頭に備えることも忘れてはいなかった。しかし、長引く対テロ戦争が米軍に多大な負担を強いる一方で、急速に台頭した中国によって、米国が中心となって築き上げてきた国際システムや国際公共財までもが脅かされる状況となった。
QDR2006では、中国などの「混乱型」の軍事力によって将来米軍の優位が脅かされる可能性があるとの懸念が明示され58、「中国が平和的な経済成長と政治的自由化の道を選択することを促す59」ために軍事的に「ヘッジ」するという戦略が初めて示された60。そして、NDS2008では米国が第2次大戦以降60年間以上享受してきた行動の自由と国際公共財(グローバル・コモンズ)が(中国の)アクセス阻止戦略によって脅かされているとの認識が明示され61、QDR2010においては、米軍が直面する挑戦(脅威)の様相が次の3点として示された62。

@米国の軍事力の優位性を相殺するため、敵は「ハイブリッド(hybrid)」な方式を採る。「ハイブリッド」方式の作戦は、高度な軍事技術と情報戦能力、さらにはテロ等を含む非対称な能力を用いて威嚇、強制を試みる国家の他、非国家主体が含まれる。
A新興国や非国家主体の台頭等により、「グローバル・コモンズ」における安定性が脅かされるようになっている。(具体的には、サイバー攻撃や衛星破壊兵器、宇宙への進出、米国のパワー・プロジェクション能力を脅かすシステムへの投資)
B変化する国際環境が近代国家システムに圧力を加え、脆弱な国家と結びついた挑戦の頻度や深刻さが増す。

これらには特定の国が示されていないが、いずれも中国を主対象としていることが推察できる63。さらに、同レポートでは米国の守るべき国益は価値観と国際秩序であるとされ、対テロ戦争の負担が増大する中で、中国の台頭がもはや既存の国際システムをも脅かす脅威となりつつあるとの認識が示された64。そして、「アクセス阻止の環境における攻撃を抑止・打破する」とのパラグラフにおいて、かつて「悪の枢軸」と呼称された北朝鮮及びイランと中国を併記するに至り、中国を脅威の主対象に位置付ける姿勢が示されたのである65。

(2) 中国のアクセス阻止戦略に対する脅威認識の顕在化
ア 中国のアクセス阻止戦略に関する認識の変化
中国のアクセス阻止戦略については2000年当初から「中国の軍事力」報告書に記述されているが、その手段は専らサイバー攻撃等によるものであり、中国の戦略目的はあくまでも台湾海峡または南シナ海に米軍を近接させないことであると認識されていた66。
しかし、このような認識は、2006年の報告書において一変している。これは、QDRや「中国の軍事力」報告書等において中国に対する「ヘッジ」戦略が明確化されたのと時期を同じくしており、中国のアクセス阻止戦略の目的は「第2列島線内に艦艇を侵入させないことである67」とした上で、「中国は中国の活動エリアにおける領域拒否の戦力を全次元にわたり増強させており、多層的に攻撃的な能力を身に付けている」と論じている68。
そして、2007年の報告書では、QDR2006において示された「撹乱的能力」が「アクセス阻止能力」のことであると明示され69、2008年の報告書は、中国軍のアクセス阻止能力について、次のように具体的に述べている。

「中国のアクセス阻止/領域拒否の重点は、西太平洋を含め中国周辺に対する接近を制限し支配することにあるように見える。例えば、進行中の計画は、中国軍に中国沿岸から1000海里の相手の水上艦と交戦できるシステムを提供するであろう。これらは以下のシステムを含む。対艦弾道ミサイル、海上の目標を攻撃できるように設計され、移動する艦船を位置測定し追従するために水平線以遠の目標補足システムを備えたMRBM、在来型と原子力推進型の攻撃型潜水艦、水上戦闘艦、海上攻撃機、対地攻撃、サイバー、特殊作戦群。」

中国のアクセス阻止/領域拒否能力が脅威として顕在化したのは、単に兵器の近代化によるものではない。個々の兵器やシステム、さらには洗練された非対称戦術が戦術思想のもとで組み合わされ、現実の中国の行動と相まって急速に脅威として顕在化したのである70。
イ アクセス阻止/領域拒否戦略を構成する主要素
(ア) 戦略核
米国防総省は、中国が通常兵器による攻撃に対する報復または抑止のために核兵器を先制使用する可能性があるとみている71。このため、2006年にDF-31(射程7200q以上)が路上移動式・固形燃料推進化され、翌2007年には米国本土を射程内に収めるDF-31A(射程11200q以上)が第二砲兵内の部隊に実戦配備されたことに注目している72。
さらに中国は、12の発射基を搭載した新型の晋級(094型)弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(最大5隻)への搭載用として新型潜水艦発射弾道ミサイルJL-2(巨浪2号:射程7200q以上)の開発に取り組んでおり、米国防総省は2009年から2010年の間に初期運用能力(IOC)に到達すると見積っている73。このような残存性の高い弾道ミサイル搭載原子力潜水艦の運用が開始された場合、米国を直接攻撃し得る能力が飛躍的に向上することから、米国防総省は、中国が初めて信頼性のある海からの核攻撃能力を持つとして警戒している74。
(イ) 短・中距離弾道ミサイル
中国は、1990年代から通常弾頭搭載弾道ミサイルの著しい増強を続けてきたが、アクセス阻止/領域拒否の能力の中核を形成する短・中距離の弾道ミサイル戦力の増強傾向は特に際立っている。これに対し、米国は、INF条約(中距離弾道ミサイル全廃条約)に基づき、同盟国も含めて短・中距離弾道ミサイル(射程500〜5500km)を保有していない。中国が一方的にこれらの弾道ミサイルの著しい開発を進めることは、地域の軍事バランスを崩し軍拡競争を誘発する可能性があることから、米国のみならず、ロシアも懸念を示している75。
なかでも、中国がCSS-5(DF-21)をもとに開発を進める対艦弾道ミサイル(Anti-ship Ballistic Missle: ASBM)については2007年度以降の報告書に継続して記載されており76、2009年には、1500q以上の射程を持つASBMは77「中国軍が適切な指揮統制システムと組み合わせ、西太平洋において空母を含む艦船を攻撃する能力をもつ意図を示している78。」(傍点筆者)と、具体的な中国の意図にまで踏み込むとともに、以下のように危機感を示している。

「対艦弾道ミサイルはその弾頭に『目標を補足し対象物を貫通する付属弾』を搭載できる。これは『艦載機、艦橋その他損害を生じやすく重要な場所の破壊』を狙うもので、これを中国が手中にした場合、中国は地域紛争において先制能力及び威力をもって行動を抑止する選択肢を身につけることとなる。その意味合いには格別のものがある79。」

ASBMの配備については、太平洋軍司令官のウィラード中将が、「ここ数年間の試験を通じて、ASBMは既に初期運用能力を持つに至った。」との見解を示している80。移動する空母等の水上艦艇に弾道ミサイルで損害を与えるためには、高い命中精度と機動再突入体(Maneuverable Reentry Vehicle: MaRV)等の技術が必要であることに加え、測位衛星や超水平線(Over The Horizon: OTH)レーダー、ステルス機及びUAV等によるリアル・タイムの位置把握能力と高度な指揮情報通信能力(C4ISR)を有することが重要な鍵となるが、中国海軍は、空間波(sky wave)と表面波(surface wave)のOTHレーダーを用いて水平線以遠の目標照準能力を改善し、射程と正確度が改良されたミサイルを既に開発しており81、ASBMの運用能力の信憑性は高まっている82。
(ウ) 巡航ミサイル
中国軍は、国産で地上発射型のDH-10地上攻撃巡航ミサイル(射程2000q以上83)及び地上・艦艇発射型J-62対艦巡航ミサイル(2008年に配備された新型のタイプCは射程150マイル以上)に加え、水上艦艇及び潜水艦に搭載可能な多種・多数の高精度巡航ミサイルの装備を加速させている84。とりわけ、在日米軍基地を直接攻撃可能なDH-10は、年に100基以上(2年間で2〜4倍)の驚異的なペースで増強されている85。〔表2〕

さらに、中国軍による対艦巡航ミサイル(Anti-ship Cruise Missle:ASCM)の研究開発、製造及び外国からの調達の速度はここ10年の間に加速しており86、ASCMによる対艦攻撃能力は著しく向上している87。これらに加え、C4ISR能力を含む中国軍の総合的な運用能力が向上すれば、在日米軍基地は言うに及ばず、空母機動部隊を始めとする米軍等の水上艦艇にとって第2列島線内に近接することすら困難となる極めて深刻な脅威となり得る。

〔表2〕
中国の弾道ミサイル、長距離巡航ミサイルの増勢状況
AirSeaBattle4.gif 出典:「中国の軍事力報告書」(2006−2010)のデータをもとに筆者作成。
ミサイル 種類 射程(km) 2005 2006 2007 2008 2009
CSS-4 ICBM 13000+ 20 20 20 20 20
DF31A 11270+ 10以下 10 15
DF31 7250+ 10以下 10 10
CSS-3 5470+ 24 24 20 20 20
CSS-2 MRBM 3000+ 18 18 18 20 20
CSS-5 2500+ 50 50 80 80 95
CSS-6 SRBM 600 315 350 355 400 400
CSS-7 300 475 625 715 750 750
DH-10 LACM 2000+ 250 350 500

(エ) 宇宙戦力
「中国の軍事力」報告書は、「中国の宇宙における活動と能力は、衛星攻撃計画を含め、台湾海峡とそれ以遠の紛争における領域拒否のために極めて重要な意味を持っている」と指摘している88。2007年1月に気象衛星に対して行われたASAT(対衛星)兵器の実験によって、中国軍が宇宙空間における「運動力学的破壊(kinetic kill)」能力を有したことが実証されたが、米国防総省は、中国がさらに核兵器によるEMP(Electro-Magnetic Pulse)の使用を考慮するとともに、UHF帯を使用した通信妨害装置や宇宙配備のC4ISRを向上させる技術を獲得した他、地上配備型レーザー、粒子ビーム等を使用したASAT兵器を開発中であり、敵の衛星及びその地上支援施設を妨害、遮蔽、あるいは無力化するための能力を向上させていると見積っている89。
また、中国は2006年以降に合成開口レーダーや光学観測衛星を含むリモート・センシング衛星「遥感」を打ち上げ、2010年までに12基が運用されている。さらには、国産の航法衛星による軍民両用の地球規模の位置測定を可能にする完全なネットワークを2015年から2020年までに所有する計画である90。
これらは、中国軍が高度なC4ISR能力を有し、ASBMの運用を含むアクセス阻止戦略のための重要な能力を身に付けつつあることを示している。
(オ) サイバー戦力
米国防総省は、中国軍が軍事行動の初期段階において敵の行動及び兵力投射を支援している戦闘情報ネットワークを混乱させるため、ASAT兵器の開発に加え、電子戦、サイバー戦及び直接的な攻撃によって電磁的優位性を獲得すること(統合ネットワーク電子戦争)を重視していると分析している91。中国軍は、敵のコンピューター・システム及びネットワークを攻撃するための情報戦部隊を作りウイルスを開発し、2005年には軍の演習に敵のネットワークへの先制攻撃を行う作戦を演習に取り入れ始めた92。さらに、2007年には米国の国防総省や他の政府機関を含めた世界のおびただしい数のコンピューター・ネットワークが中国国内を発信源とするとみられる不正侵入にさらされた93。
QDR2010において宇宙空間やサイバースペースにおける脅威に対抗する能力を向上させる必要性が強調されているのは94、中国のこのような能力と意図を米国が強く認識しているためである。
(カ) 海・空軍力
中国軍は、弾道ミサイル等に加え、先進的な機雷95、潜水艦、海上攻撃機、及び改良されたASCMを装備した近代的な海空兵力を著しく増強させている。 また、中国海軍が海南島の地下に建設した大規模な潜水艦基地には晋級弾道ミサイル潜水艦(Type94)等各種の新型水上艦を収容することが可能であり、潜水艦は衛星等によって行動を把握されることなく重要なシーレーンに進出することが可能となった96。
米国防総省は、これらが中国のアクセス阻止/領域拒否能力に縦深性を持たせ、より遠方において米軍等の行動を抑止することに資すると分析している97。
さらに、中国軍はHQ-9、SA-20(限定的な弾道・巡航ミサイル防衛能力を有すると報じられた。)などの地対空ミサイルに加え、ロシア製及び国産の第4世代戦闘機を取得、増産している98。これらは、ロシア製のIL-78 のような空中給油機や、イスラエル製のハーピー(HARPY)を含む航続距離の長いUAV及びUCAV(無人戦闘攻撃機)の取得・開発と相まって99、海・空軍攻撃機の作戦航続距離を延伸させ、中国沿岸から離れた水上戦力、空中戦力、前方基地及び兵站の結節点に対する脅威を増大させると見積もられている100。
(キ) 情報戦
情報戦は、中国軍の非対称戦を形成する主要素の一つに位置付けられている101。2008年の報告書は三戦について次のように述べ、中国が既存の国際規範を変える試みをしていることを指摘している102。

「三戦は、他の軍事、非軍事作戦と連携して使用するために開発されており、中国は、長い間国際社会の規範として受け入れられてきた航行の自由と領域の限界を打ち破り、国家主権を200海里のEEZ(排他的経済水域)及びその上空、そして恐らくは宇宙にまで広げるための国際世論形成と国連の海洋法条約に関する解釈を形成する試みの中に法律戦の概念を織り込んでいる。」
【三 戦】
@ 心理戦:プロパガンダ、欺瞞、脅迫、強制等により敵の兵員やそれを支援する市民に衝撃を与え、敵の戦闘作戦遂行能力を阻害すること。
A メディア戦:中国の軍事行動に対する国内外の支持を獲得し、中国の利益に反する政策遂行阻止のため、世論に影響を与える情報を流布すること。
B 法律戦:国際的な支持を獲得し、中国の軍事行動に対して起こり得る政治的反動に対処するため、国際法と国内法を用いること。

「中国の軍事力」報告書は、中国が長期的な戦略目標を達成するために過去に例を見ないほど急速かつ総合的に軍事力を増強している状況を克明に記している。それは、非軍事分野、戦略、ドクトリンの開発を含むあらゆる範囲を含んでおり、東アジア地域の軍事バランスが着実に中国側に傾きつつあることを示している。


3 中国の軍事的行動と米国の対応

本節では、現実の世界に焦点を当て、中国及び米軍の意図を検証する。

(1) 中国の軍事的行動
2008年、米国議会における公聴会において当時の米太平洋軍司令官であったキーティング(Timothy J. Keating)大将が、中国の意図を示す重要な証言をした。それは、2007年5月に同司令官が中国を訪問した際に会談した中国軍の幹部から、「ハワイを起点として米中で太平洋を分割し、西太平洋とインド洋は中国が管理してはどうか。」と提案されたというものである。キーティング大将は、この戦略構想の提案について、「中国は自国の影響が及ぶ範囲の拡大を欲している。」と警戒感を示した。また、2006年10月には、中国の潜水艦が空母キティー・ホークを追尾し、魚雷の射程内の海域で浮上するという事件を起こし、2007年11月には高波と悪天候のために掃海艦艇が香港のビクトリア・ハーバーに入港を申請したが中国側はこれを拒否し、さらには事前調整のあったキティー・ホーク空母打撃群(Carieer Strike Groupe:CSG)の入港をも直前に拒否したことにも触れ、「これまでの米中軍事交流は、米国の期待を裏切るものであり、信頼醸成に値するものではない」と証言したのである103。中国側のこのような発言と行動は、中国がインド洋から太平洋に至る海域における地域の覇権を望んでいることを明確に示しており、中国の意図の裏付けであると言える。
このほかにも、2007年には前述の衛星撃墜事案や中国を発信源とするサイバー攻撃事案が相次いで生起し104、2009年3月にも中国の領海(12海里)以遠の南シナ海で活動していた米海軍の音響測定艦インペカブルの航路を中国の漁船が阻み、妨害行為を行うという事件を起こしている105。これらの事案が生起したのは、中国の軍事力が質・量ともに充実し、米国がQDR等で強い警戒感を示しはじめた時期と合致している。
このような中国の行動は、軍事的「能力」の獲得と相まって、中国の「意図」として直接的な脅威認識の形成につながったのである。

(2) 米国の対応
ア 軍備の見直し
米軍は、今後その価値が大きく低下していくと考えられる軍事能力への投資を控え、将来の脅威に備えるための資源を確保する方向へと既に舵を切っている。例えば、ゲーツ国防長官は、海軍の新ズムウォルト級駆逐艦の建造計画を見直し、生産を打ち切ることを表明している。同駆逐艦は、武装兵力による紛争の脅威に対処するという目的からすると高価すぎ、一方で、東アジア海域やペルシャ湾岸での活動をこなすには脆弱性が大きいからである106。また、QDR2010においては新たにサイバー軍司令部を創設することが宣言されたほか107、新型空母の調達の延期、陸軍の将来戦闘システム計画の調達の再検討、古い第4世代の戦闘機部隊の削減等を打ち出しており、第5世代戦闘機や、より長距離かつ多用途性のある航空機、通常兵器によるグローバル打撃(Conventional Prompt Global Strike)108、さらには抗たん性のある基地インフラ及びサイバー防御を含む戦力増強システムへの投資とのトレード・オフを行うことが示されている109。
実際に、米軍は無補給フルペイロードで約3900qの航続距離を有するN−UCAS(Navy Unmanned Combat System)の開発に加え、軍事用無人シャトル(X37B)や滑空式無人攻撃機(X51A)110などのグローバル打撃兵器の開発、アークライト計画(DDGのVLSに遠距離超音速ミサイルによる対地攻撃能力を付与)等が次々に進められている。これらは全て、長射程、遠距離攻撃能力を備えた装備品であり、アクセス阻止戦略に対抗するためのエア・シー・バトル構想に求められる戦力と符合している。
イ 戦力の展開
2010年6月28日、ミサイル原子力潜水艦オハイオがフィリピンのスービック基地に、同じくミシガンが韓国のプサンに、そして同フロリダがディエゴガルシアにそれぞれ寄港した。米軍は特に中国海軍のアジア太平洋からインド洋での増強に注視しており、3隻のSSGNを同時に中国の近海域に浮上させることは前例がないという111。そして、米国は、2010年の7月9日には20機のF22をハワイのヒッカム空軍基地に配備し、改修されたオハイオ級SSGNを西太平洋に、そしてグローバル・ホークをグアムのアンダーセン基地へそれぞれ配備した112。また、2010年10月には、オハイオ級SSGN「ミシガン」が横須賀に寄港し、一部報道陣に内部を公開しており、同艦の艦長は、記者団に「平和のためにここにいる。我々は対応する準備はできている。」と述べた113。
米軍は、現実に着々と軍備の見直しを進めるとともに、JASBCを見据えた部隊配備や訓練、そして「心理戦」を実践しており、中国に対する抑止態勢を整えつつある。これらの事実が、米国の中国に対する意図を示す何よりの証左である。
ウ 同盟の強化及び地域安全保障の多層化
アジア太平洋の安全保障システムの一つの特徴は、冷戦期以来、アメリカを中心とする車輪の軸と輻(ハブ・アンド・スポーク)の同盟体系の存在であった114。だが近年、米国は二国間の関係から、多国間によるより多層的、重層的な安全保障体制の構築(同盟のWEB化)を目指すようになっている115。QDR2010は、「安定した国際システムを単独では維持できない」として、「既存の同盟関係の維持強化と新たな協力関係の構築は米国の安全保障戦略の中核的な要素」であると述べている116。そして、出現しつつあるアクセス阻止/領域拒否の能力に対応するための新たな前方展開プレゼンスの追求や117、前方展開基地と通常兵器及び核兵器を組み合わせた地域抑止アーキテクチャ(regional deterrence architecture)の構築について言及している118。これらの背景には、中国の軍事的脅威に対抗しつつ、地域的安全保障の枠組みによって中国を国際社会のルールに取り込もうとする意図がある。
他方で、2008年10月にJASBCの開発を目的に実施された図上演習「Pacific Vision」においては、敵による航空基地等の攻撃を受ける前に、兵力をいかに退避・分散させるかが勝敗の鍵となる点が教訓として得られた。そして、空軍の兵力は、アラスカ、ハワイ及びオーストラリアを結ぶ圏外を拠点とし、日本、韓国、グアム、テニアン、サイパン及び東南アジアに展開することが適当とされ、今後はシンガポール、インド、インドネシア及びヴェトナム等との関係の構築が重要であると認識された119。
米国が日米同盟、米韓同盟のみならず、米豪、米印、日豪、あるいは日米韓等の安全保障協力及び安全保障対話を推進し、さらにインドネシアやヴェトナム等のアジア諸国との協力関係を深め、地域における多層的地域安全保障の枠組みを構築しようとしているのは、対話による地域の安定化を図ることのみでなく、JASBCを背景とした純軍事的な目的も含んでいるのである。


おわりに

我が国を取り巻く安全保障環境が大きく変わりつつある。米国は、冷戦後の数十年にわたり同盟と前方展開戦略によって世界全域における行動の自由を確保し、米国にとって重要な地域へのパワー・プロジェクション能力を維持することによって米国の国益を擁護してきた。だが、中国のアクセス阻止戦略によって、米国の軍事的優位性は急速に失われつつある。
米軍は、長期化する対テロ戦争と経済の低迷によって軍事費を削減せざるを得ない状況の中で新たな脅威に対処していかねばならない。そのため、各軍種が持つ能力の相乗効果を最大限に発揮させ、かつコストの抑制にもつながる統合を基軸とした新たな作戦構想(JASBC)を構築することにより将来にわたって米軍の優位性を確保するとともに、同盟国の協力を得て中国の軍事行動を抑止し得る態勢を構築しようとしている。そして、既にそのための準備を始めている。
中国が米国に対し真っ向から戦いを挑むことは考えにくい120。中国の狙いは、西太平洋以西に米国が戦力を投入するためのコストを吊り上げ、同地域への米軍の介入を阻止し、米国の影響力を削ぐことにある。他方で、クレピネビッチのように、中国の積極果敢な軍備増強路線からみて、何らかの抑止策を採らない限り、中国は侵略ではなくとも強制力による問題解決を模索するようになる可能性は高いとの主張もあり121、中国の動向については周辺国にとっても引き続き注視していかねばならない事項である。
いずれにせよ、米国のJASBCは、日米同盟を基盤とする我が国の安全保障にとって大きな影響を与える。我が国としては、当面、昨年12月に閣議決定された防衛計画の大綱に示されている「動的防衛力」を構築するに当たっては、JASBCの開発動向を踏まえつつ、新たな戦略環境に適した組織・編成及び装備体系への転換を図るとともに、同盟国等との関係を一層緊密化することによって実効的な抑止及び対処に資する防衛態勢を構築していく必要があろう。

1 QDR2010, Preface, p.1, Executive Summary, p.8, Introduction, p.1.
2 JASBCの開発はQDR2010において「アクセス阻止の環境下における攻撃を抑止、打破」するための手段として初めて公表された。QDR2010, pp.31-32.
3 QDR2010, PREFACE, p.1.
4「接近阻止/領域または地域拒否」、「A2/AD」とも表記される。Ibid., p.9, p.31.; Andrew F. Krepinevich “Why Air sea Battle?,” Washington D.C.: CSBA (Center for Strategy and Budgetary Assessment), April 2010, pp.8-10.; Andrew Krepinevich, Barry Watts& Robert Work “Meeting the Anti-Access and Area-Denial Challenge,” CSBA, 2003,
p.A.
5 QDR2010, p.7, pp.31-32.
6「The military power of the people’s Republic of China」及び「Military and security Developments Involving the People’s Republic of China」(2010に名称変更)。以下、「The military power of the PRC」と表記する。
7 Andrew F.Krepinevich,Jr. “The pentagon’s wasting Assets,” Foreign Affairs July/August 2009,p.18.; QDR2010, Rebalancing the Force, pp.31-32.
8 Jan Van Tol , with Mark Gunzinger, Andrew Krepinevich, and Jim Thomas “Air-Sea Battle, A Point of Departure,” CSBA, April 2010, p.xi.; QDR2010, pp.13-14.; Colin Clark “Flournoy Details QDR Threats, Principles,” http://www. dodbuzz.com 2009/04/29/flournoy-details qdr-threats-principles, accessed September 13, 2010.
9 Krepinevich ,“Why Air sea Battle?,” p.8.
10米国の相対優位・劣位を評価するとともに米国の国益にかかわる超長期の安全保障上の問題と機会を明らかにし、国防長官等を補佐するための長官官房付属機関。
11 ランド研究所を経て1973年のネット評価室創設以来局長を務める。冷戦期にソ連が見せかけよりも弱いこと見極めた人物であり、RMAの提唱者としても知られる。
12 元陸軍中佐。ネット評価室を退任後CSBAを設立し、理事長を務めている。RMAの研究に携わり、JASBCの提唱者とされる。
13 Richard Halloran “Air Sea Battle A new operational concept looks to prepare the U.S. and its allies to deter or defeat Chinese power,” AIR FORCE MAGAZINE, August 2010, pp.46-47.
14 Krepinevich, “Why Air sea Battle ?” p.8.
15 QDR1997策定のために2020年までの米軍の態勢を展望し、必要な助言を付与する目的で組織された。
16 Krepinevich, “Why Air sea Battle ?” p.10.
17 National Defense Panel, “Transforming Defense−National Security in the 21st Century,” December 1997, pp.12-13, p.33, p.35.
18 CSBA Thinking Smart About Defense National Defense panel
http://www. csbaonline.org/2006-1/1.Strategic Studies/NDP.shtml,
Accessed November 9, 2010.
19 トマス・バーネット『戦争はなぜ必要かThe Pentagon’s New Map―War and Peace in the Twenty-first Century』新崎京介訳、講談社インターナショナル、2004年、97頁。;石原敬浩「9.11が米軍の脅威認識に与えた影響」『波濤』2009年1月、23-60頁参照。
20 江畑謙介『〈新版〉米軍再編』、ビジネス社、2006年、21−84頁;川上高司『米軍の前方展開と日米同盟』、同文館出版、2004年、参照。
21 Vernon E. Clark,“Sea Power 21; Projecting decisive joint capabilities,”United States Naval Institute Proceeding, No.128, October 2002, p.2.;大西哲「米海軍の21世紀ヴィジョンの意義−米海軍は「シー・パワー21」により何を目指そうとしたのか?−」『波濤』通巻216号、2011年9月、20‐21頁参照。
22 Roger Cliff ,Mark Burles,Michael S. Chase, Derek Eaton, Kevin L. Pollpeter “Entering the Dragon’s Lair: The Implications of Chinese Antiaccess Strategies,” RAND Corporation, 2007, pp.12-15.
23 Krepinevich, “ Air-Sea Battle,” p.1.
24 Krepinevich, “The pentagon’s wasting Assets,”p.33.
25 Air Force Times, New program could redefine AF-Navy joint ops, Nov16,2009.
26 AIR FORCE MAGAZINE, August 2010, p.47.
27 U.S. Department of Defense, Navy League Sea-Air-space Exposition,
http://www.defense.gov./speeches/speech.aspx?speechid=1460,
Accessed October 25,2010.
28 CSBAのレポートでは、米国の脆弱性を狙う中国の意図をかわす戦略(offset strategy)とも表現されている。Krepinevich, “Air-Sea Battle,” p.9.
29 QDR2010, p.31.
30 Krepinevich, “Air-Sea Battle,” p.9.
31 QDR2010, pp.31-32.
32 Krepinevich, “Air-Sea Battle,” p.9.
33 浅野亮「中国は何を目指しているか」国分良成編『中国は、今』 岩波書店、2011年、67頁。
34 土山貫男『安全保障の国際政治学−焦りと傲り』有斐閣、2004年、178頁。
35 U.S. Department of Defense, Navy League Sea-Air-space Exposition,
http://www. defense.gov./speeches/ speech.aspx?speechid=1460,
Accessed October 25, 2010.
36 U.S. Department of Defense, Speech, Statement on Department Budjet Efficiencies, Secretary of Defese Robert M. Gates,the Pentagon, Thursday, Jan,06, 2011.
http:// www.defense.gov/speeches/ speech.aspx?speechID=1527,
Accessed April 12, 2011.
37 Robert M. Gates, “A Balanced Strategy,” Foreign Affairs, Jan/Feb 2009.
38 Mark A. Gunzinger, “Sustaining American’s Strategic Advantage in Long-Range Strike,” CSBA, 2010, pp.2-3, pp.8-13.
39 Ibid., pp.14-16.
40 Air Force Times, Air Force-Navy team may counter China threat .
41 Donna Miles, “Defense Leaders Laud Air-Sea Battle Concept Initiative,” American Forces Press Service,Washington,June7,2010.
http://globalsecurity.org/military/news/2010/06/mil-100607-afps06.,
Accessed Octber 10, 2010.
42 QDR2010, P.60.
43 Krepinevich, “Air-Sea Battle,” p.xi,vii.
44 フランク・N・シューベルト、テレーザ・L・クラウス『湾岸戦争 砂漠の嵐作戦』滝川義人訳、東洋書林、1998年、38−46頁参照。
45 Krepinevich, “Air-Sea Battle,” p.8.
46 Krepinevich, “The pentagon’s wasting Assets,” p.22.; Jason E.Bruzdzinski, “Demystifying Shashoujian: China’s ‘Assassin’s Mace’ Concept,” pp.312-313. http://www.mitre.org/work/best_papers/best_papers_04/ bruzdzinski_ demystify/ bruzdzinski_demystify.pdf, Accessed December15,2010.
47 James Kraska, “How the United States Lost the Naval War of 2015,” Orbis, Winter 2010, p.40参照。
48 U.S.-China Economic and Security Review Commission, 2010, p.90.
49 中国の先制攻撃戦略は、日本軍の戦略(真珠湾攻撃)を参考にしているとされる。Krepinevich, “Air-Sea Battle,” p.21.
50 Krepinevich, “The pentagon’s wasting Assets,” p.22.
51 Krepinevich, “Air-Sea Battle,” p.11.
52 Ibid., p.11.
53 QDR2010, pp.31-34.
54 Krepinevich, “Air-Sea Battle,” p.56.
55 2003年末、胡国家主席は、中国が通商ルートを確保する必要性について「マラッカ・ディレンマ」として言及している。「中国の軍事力」2005, p.33.
56 Krepinevich, Air-Sea Battle,” pp.49-73.
57 スティーブン・M・ウォルト『米国世界戦略の革新.世界は「アメリカン・パワー」を制御できるか?』奥山真司訳、五月書房、2008年、318‐358頁。
58 QDR2006, pp.28-29.
59 Ibid., pp.26.
60 Ibid., pp.29-30.
61 NDS2008, p16.
62 QDR2010, Executive Summary, pp.7-9.
63 石原敬浩「Hybrid Warfareと超限戦−今、『超限戦』を読み直す−」『波濤』通巻210号、2010年9月、68−72頁参照。
64 QDR2010, Executive Summary, pp.5-7, Deffense Strategy, p7.
65 QDR2010, pp.31-32.
66 The military power of the PRC 2000, p.11.
67 The military power of the PRC 2006, p.11.
68 Ibid., p.25.
69 The military power of the PRC 2007, pp.15-16.
70 National Defense Strategy 2008, The Strategic Environment, p.9.
71 The military power of the PRC 2010, p34.
72 The military power of the PRC 2009, p.48.
73 Ibid.
74 Ibid.
75 朝日新聞グローブ「中国、海軍大国への胎動 米中の軍事専門家に聞く−アンドリュー・エリクソン」。
76 The military power of the PRC 2007, p.7.; 2008, p.2.
77 2010年の「中国の軍事力」報告書では、射程1000〜3000qとされている。
78 The military power of the PRC 2009, p.48.
79 The military power of the PRC 2009, p.21.
80 U.S. commander says China aims to be ‘global military power’ asahi.com.
81 The military power of the PRC 2008, p.14.
82「空母攻撃ミサイル開発が進展=中国のステルス機も警戒−米国防長官(2011年1月9日付)」時事通信社。
83 The military power of the PRC 2010, p.31.
84 The military power of the PRC 2009, p.48.
85 2009年12月時点で200〜500基保有。Ibid.
86 Ibid., p.31.
87 4隻のソブレメンヌイ級DDGには超音速対艦巡航ミサイルSS-N-22/SUNBURNが装備され、12隻のキロ級SSのうち8隻には、SS-N-27B/SIZZLER が装備されている。The military power of the PRC 2010, p.2.
88 Ibid., p.36.
89 The military power of the PRC2009, p.28.
90 The military power of the PRC 2010, p.7.
91 The military power of the PRC 2009, p.13.
92 Ibid., p.29.
93 The military power of the PRC 2008, p.4.
94 QDR2010, Rebalancing the Force, p.37.
95 中国は、深深度機雷、自走式・遠隔操作可能な機雷、遠隔起爆が可能な機雷等、多様な機雷を保有している。The military power of the PRC 2003, p27.
96 2010年にほぼ完成したとされる。Ibid., p.39.
97 The military power of the PRC PRC 2010, p.30.
98 The military power of the PRC 2010, p.33.
99 The military power of the PRC 2008, p.23.
100 The military power of the PRC 2010, p.33.
101 The military power of the PRC 2009, p.16, p.24.
102 The military power of the PRC 2008, p.19.
103 Congressional Hearings-March 12, 2008, HASC Hearing-Fiscal Year 2009 for U.S. Pacific Command and U.S. Forces Korea, Washington D.C. March 12, 2008.
104 2010年には、米国の情報機関が、2009年頃から米国の政府・軍機関に対して頻発したサイバー攻撃は中国の海南島の人民解放軍が発信源であることを断定している。http://sankei.jp.msn.com/word/china/100710/chn100710/1939002-n1.htm、
2011年1月7日アクセス。
105 現場は中国のEEZであるが、EEZにおける「航行の自由」及び海軍艦艇による調査活動は慣習国際法及び国連海洋法条約上認められた行為であり、中国の主張は、国際秩序及びグローバル・コモンズの保護を目指す米国の国益に反する。
106 Krepinevich, “The pentagon’s wasting Assets,” p.31.
107 サイバー軍司令部は2011年5月に初期運用が開始され、同年11月には本格運用が開始されている。
108 地球上のいかなる場所においても(地球の反対側:約9000NM)1時間以内に通常兵器でピンポイント攻撃を行う構想。ブッシュ政権下において採用され、オバマ政権下の「核のない世界」構想を支えるとともに、中国の軍事目標やテロ組織等に対しピンポイントで打撃を与え得る構想として開発が加速されている。David E. Sanger and Thom Shanker “U.S. Faces Choice on New Weapons for Fast Strikes,” The New York Times, April 22, 2010. http://www.nytimes.com/2010/04/23/world/ europe/ 23strike. Html,
Accessed May 17, 2011.
109 QDR2010, p.40.
110 B-52等の航空機から発射され、発射後に高度約5万フィートまで上昇、速度マッハ5で滑空し、地球上のあらゆる地域を1時間以内にピンポイント攻撃が可能。
111 Mark Thompson, “U.S. Missiles deployed Near China Send a Message,” TIME, July 08, 2010.
112「米空軍、グアムに無人偵察機配備 中国を監視」『共同ニュース』2010年9月8日。
113「米海軍、原子力潜水艦『ミシガン』を異例の公開 中国を牽制か?」『産経ニュース』2010年10月1日。
114 山本吉宣(編著)『変貌するアメリカ太平洋世界V‐アジア太平洋の安全保障とアメリカ』彩流社、2005年、14頁。
115 Dennis C.Blair and John T. Hanley Jr., “From Wheels to Webs: Reconstructing Asia-Pacific Security Arrangements,” The Washington Quarterly, Winter 2001, pp.7-17.
116 QDR2010, p.57.
117 シンガポールとの安全保障枠組み合意と基地の設置等。Ibid., p.66.
118 Ibid., p.14.
119 Richard Halloran “PACAF’s “Vision” Thing, A new wargame tells airman what it will take to hold the line in the Far East,” AIR FORCE Magazine, January 2009, p.55.
120 Robert M. Gates, “A Balanced Strategy,” Foreigin Affairs, January/February, 2009.
121 Krepinevich, “The pentagon’s wasting Assets,” p.27.

統合エア・シー・バトル構想の背景と目的1-2-8.pdf
統合エア・シー・バトル構想の背景と目的1-2-8.txt
<-- 日米安全保障協議委員会(「2+2」)共同発表 2012.4.27
 
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